2016 Fiscal Year Research-status Report
タイムラプスイメージングに基づく膵島形成原理の解明
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16K08090
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
吉田 真子 関西医科大学, 医学部, 講師 (40392170)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 膵島形成 / Ngn3 / 内分泌前駆細胞 / ノックインマウス / 細胞系譜追跡実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病の主な原因としてインスリン産生β細胞の細胞数減少および機能低下が知られており、その根本的な治療法として膵島移植に一定の成果が認められている。近年、ドナー不足問題を解消できるiPS細胞を利用した移植再生医療への期待が高まっており、β細胞を効率的に誘導するための研究が盛んに行われている。しかしながら、安全性評価およびコストなどの観点から、スタンダードな治療法として確立されるには引き続き多くの時間を要するものと考える。そこで、本研究では発生生物学的アプローチにより膵島形成原理を解明し、再生医療分野への貢献を目指すこととした。具体的には、原始膵管に出現する膵内分泌前駆細胞(Ngn3陽性細胞)がどのような仕組みで離層・移動・集合・分化・増殖して機能的膵島が構築されるのか、タイムラプスイメージングを用いた動態解析を行い、分子機構解明を目指す。 まず、マウス生体内にて膵内分泌前駆細胞を可視化するため、Ngn3-Venus-IRES-CreERT2およびNgn3-IRES-rtTAノックインマウスの新規作製を試みた。これらのマウスをRosa26-rainbow多色細胞系譜マウスと交配することにより、Ngn3陽性膵内分泌前駆細胞が特異的に標識され、その運命を詳細に解析することが可能となる。上記ノックインマウス作製に必要となる2種類のターゲティングベクターを構築後、ES細胞への遺伝子導入を実施し、相同組換えを起こしたES細胞クローンの樹立に成功したものの、キメラマウス作出には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者は以前より一連のノックインマウス作製実験に従事しており、材料となるターゲティングベクターの構築および相同組換えを起こしたES細胞クローンの樹立までのステップは順調に推移していた。しかしながら、複数の異なるES細胞クローンを用いて胚盤胞注入実験を試みたにも拘わらず、生殖系列へ遺伝子導入されたキメラマウスの誕生にまで至らない事例が多発した。そこで、この問題を根本的に解決するため、新たにES細胞(TT2 ES細胞)を入手した。TT2細胞の入手および実験系の確立過程で想定外の時間を費やすこととなり、当初の計画よりやや遅れている。その他、研究代表者が妊娠(切迫早産)および出産をしたため、研究活動が制限され、遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を効率的に推進するため、新たにSox9-IRES-CreERT2ノックインマウスおよび35色Rosa26-rainbowマウスを利用する。研究代表者が所属する研究室では、Sox9-IRES-CreERT2ノックインマウスを既に所有し、日常的に実験に使用していることから、速やかな実験実施が可能である。Sox9は発生期の膵臓において膵前駆細胞に発現し、Sox9陽性細胞は膵臓を構成するすべての細胞(内分泌細胞・外分泌細胞・膵管細胞)を供給する。このため、膵内分泌前駆細胞マーカーであるNgn3の場合と比較して、Sox9陽性細胞の細胞系譜は、膵島領域のみならず、腺房および膵管にまで及ぶ。即ち、既存のRosa26-rainbowマウスを用いて多色細胞系譜追跡実験を行った場合、タモキシフェン誘導後、Sox9陽性細胞は青・橙・赤の3色いずれかに標識され、その細胞系譜は膵臓組織全体へと拡散する。3色のラベリングでは、原始膵管からどのようにして細胞が離層・移動・集合・分化・増殖して膵島が構築されるのか、個々の細胞動態を詳細に解析することが困難な可能性が示唆される。そこで、現在、所属研究室にて開発が進められている35色のRosa26-rainbowマウスを利用することにより、単一細胞レベルの高速高解像度タイムラプスイメージングを実現し、膵島形成原理の解明に努める。
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Causes of Carryover |
当該年度は本研究課題の初年度にあたり、主にノックインマウス作製のための材料となるターゲティングベクターの構築といった分子生物学実験に多くの時間を費やし、動物実験および膵臓組織のin vitro細胞培養実験をあまり実施することができなかったため、予定よりも支出額が少なくなった。また、研究代表者が妊娠(切迫早産)および出産をしたため、研究活動が制限された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
産前および産後休暇を取得したことから、補助期間延長申請を行い、研究の進行状況に合わせて研究費を適正に使用する。
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