2016 Fiscal Year Research-status Report
イモゾウムシ病原性原虫の感染伝播機構と宿主代謝制御機構の定性・定量的解析
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16K08100
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
青木 智佐 九州大学, 農学研究院, 准教授 (20264103)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イモゾウムシ / Farinocystis sp. / オーシスト人工脱嚢法 / スポロゾイト単離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本種オーシストは蛍光染色剤 FITC に対して難染性であり、Cryptosporidium 属原虫などで報告のあるトリアシルグリセロール(TAG)による脂質層がこれに関与している可能性が示唆された。そこで、界面活性剤や有機溶媒への浸漬など、脂質層に影響を与えうる処理を探索した。FITC による染色強度を指標として各処理を比較した結果、界面活性剤処理では顕著な変化は見られなかったが、有機溶媒処理において FITC の染色強度が増加した。特に、低極性有機溶媒において染色強度の増加は顕著であった。また、オーシストを浸漬したヘキサンを薄層クロマトグラフィーによって分析した結果、ヘキサン中に TAG を含む複数のオーシスト由来の脂質の溶解が確認され、本種オーシストにおいても脂質層が存在することが明らかとなった。 本種オーシストに脂質層が存在することが明らかとなったため、界面活性剤や有機溶媒への浸漬など脂質層に影響を与えうる処理を行った後にトリプシン溶液中に懸濁することで、オーシストの脱嚢が誘導されるかを調査した。その結果、界面活性剤による前処理およびエタノール、アセトン、エチルエーテルを用いた試験区ではオーシストの脱嚢率に顕著な変化は見られなかったが、トルエン、キシレン、ヘキサンを用いた前処理を施した試験区において70% 前後の脱嚢率が得られた。以降、本種オーシストの前処理にはヘキサンを供試して脱嚢を促すこととした。 さらに、Percoll 密度勾配法により、オーシストと脱嚢したオーシストから放出されたスポロゾイトを分離し、スポロゾイトのみを回収することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載した研究実施計画に沿って、ヘキサンによる前処理とプロテアーゼ処理による原虫オーシスト人工脱嚢法を確立 し、脱嚢してきた原虫スポロゾイトを密度勾配遠心法によって分離・回収することができた。 しかしながら、沖縄県病害虫防除研究センターから分譲された人工飼料育イモゾウムシ個体群おいて原虫感染個体が頻発したため、原虫未感染コントロールとして供試することが不可能になり、その結果、比較実験を思うように進めることができなかった。従って、これら成果の公表が準備段階に留まったため、進捗状況をやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、以下の1~2の研究を進めるとともに、今年度は新たに3の研究に着手する。 1.原虫活性定量法の検討を進め、これらの方法を用いて各種溶媒処理した原虫オーシストの不活化条件を検討することにより、イモゾウムシ卵の有効な表面殺菌法を確立して、人工飼料育イモゾウムシ個体群におけるオーシスト汚染に起因した原虫病蔓延を完全に阻止する。 2.昨年度に確立済みの方法を用いて、分離・回収してきた増員増殖虫体を標的とした原虫感染検出法を検討する。 3.研究が進んでいるマラリア原虫での事例を参考に、GFP 発現原虫体を作製し、in vivo および in vitro での原虫感染動向を可視化し定量する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、「現在までの進捗状況」欄でも述べているように、沖縄県病害虫防除研究センターから分譲された人工飼料育イモゾウムシ個体群において原虫感染個体が頻発したため、原虫未感染コントロールとして供試することが不可能になり比較実験を思うように進めることができなかったことと、それに伴って一連の成果の公表が準備段階に留まり、学会等への出張旅費や投稿費用が発生しなかったことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度で実施予定であった比較実験を行うための消耗品の購入、学会等への参加のための旅費、投稿論文作成にあたっての英文校閲や投稿料への使用を計画している。
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