2016 Fiscal Year Research-status Report
シロアリの材食性を担う共生原生生物の遺伝子重複と木質分解能の関係
Project/Area Number |
16K08109
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
野田 悟子 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (80342830)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シロアリ / 共生原生生物 / 木質分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
シロアリ共生原生生物の酵素活性が共生群集全体にどのように寄与しているのか明らかにすることを目指し、セルラーゼ(GHF7,45等)、キシラナーゼ(GHF10)遺伝子を対象として、原生生物細胞毎の遺伝子発現量を測定する系の確立を行った。まず、これまでに明らかにした各原生生物種のGHF遺伝子多型のデータをもとに、定量PCR用のプライマーの設計を行った。対象とする原生生物遺伝子をクローニングしてコントロールプラスミドを調整し、プライマーの特異性と増幅効率をチェックした。1細胞から得られるmRNAは極微量であることから、PCRのサイクル数や条件を検討し、定量限界を設定した。オオシロアリ共生原生生物種のTrichonympha属及びEucomonympha属の1細胞から調整したcDNAから、ハウスキーピング遺伝子を含む4種類の遺伝子の発現量をqPCR法で測定可能な系を構築することができた。いくつかの1細胞を解析したところ、両原生生物ともにGHF7のセロビオハイドロラーゼ遺伝子がもっとも高発現していることが明らかになった。また、いずれのGHF遺伝子も、細胞あたりの遺伝子コピー数はEucomonympha属原生生物の方が多いと推定された。しかし、シロアリ腸内の生息数との関連が不明であるため、解析細胞数を増やし、共生系の活性への寄与について詳しく解析することが必要であると考えられた。 甲虫(カブトムシやクワガタ)類の幼虫のエサとして用いられる発酵木材チップや、ろ紙(セルロース)等の人工飼料でのシロアリを飼育が可能か検討した。ヤマトシロアリでは発酵木材チップでシロアリの生存率や原生生物叢に大きな影響は見られなかったが、オオシロアリは発酵木材チップで生存率が極端に低くなった。そのため、ろ紙をベースにした人工飼料を用いることが適当と考えられた。効率的な木質分解活性の測定系の構築にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1細胞のEucomonympha属、Trichonympha属原生生物から複数の遺伝子の発現量を定量PCRで測定する系を構築することに成功し、それぞれの細胞の遺伝子発現の違いや共生系全体との比較を行う準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
原生生物の酵素活性は、遺伝子発現量以外の要因で変動することも予想される。キシランや他の多糖の配合を変えた人工飼料によるシロアリの飼育を行う。シロアリ自体の生存率に影響を与えないような条件を検討し、基質の配合比率と腸内原生生物の生息数の変動についても観察・評価する。微量サンプルで酵素活性が測定可能であれば、遠心分画等により細胞サイズで原生生物の種類をおおまかに分画することで、種類ごとの活性が評価可能であるため、微量サンプルでの酵素活性測定の系の構築を試みる。腸内原生生物叢全体の酵素活性を測定して比較することで、各原生生物の木質分解への寄与を推定する。 また、遺伝子発現する系を構築できたので、解析サンプル数を増やし、腸内原生生物の木質分解関連酵素遺伝子の発現量が細胞ごとにどのような挙動を示しているのか解析する。シロアリの食餌条件を変化させた際に遺伝子発現量がどのように変動するのかも解析する。さらに、腸内共生系全体の発現量との比較からどの原生生物が共生系の活性に大きく寄与しているのか解析する予定である。
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Causes of Carryover |
研究試料のシロアリのサンプリングを行う予定であったが、台風の影響で飛行機が欠航になりサンプルを採取することができなかった。また、サンプリングの補助を行う予定であった研究補助者(学生)が参加できなかったこと等から、使用額に変更が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画自体に変更はなく、前年度の研究費も含めて、当初予定通りの計画を進めて行く。改めてサンプリングを行う計画で、日程等の調整を行う予定である。
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Research Products
(3 results)