2016 Fiscal Year Research-status Report
地域資源活用型小規模持続的農業システムのためのアグロエコロジー研究
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16K08117
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
宮浦 理恵 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (00301549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 健治 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (80349810)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アグロエコロジー / 物質循環 / 水質汚染 / 淡水魚養殖 / 東南アジア / 小規模農業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域資源の生物多様性を維持し、系内の物質循環とエネルギー効率の向上を図りながら生産者の農業所得による経営的自立ができる農業・食料システムの実現可能なモデルをアグロエコロジーの観点から提示することを目的とする。とくに、モンスーンアジアの小規模住民農水産業を適用範囲とし、統合的ファーミングシステムの適正な運用を目指す。 初年度は、淡水魚養殖に焦点をあて、フィリピン・ルソン島タール湖における養殖事業の構造を社会経済的視点で把握し、さらにインドネシア・西ジャワの淡水養殖地域で現地調査を実施した。西ジャワ州では、小規模養殖池の漁業の状況と池および河川の水質状態を評価した。 タール湖では1970年代から淡水養殖業が増加し、近年養殖ケージの制限を設けて湖の環境管理を行なっている。養殖枡所有者および養殖管理人(非所有)計238人を対象に聞取り調査を行った結果、資本を持たない地元住民が管理人となり、ビジネスのひとつとして養殖業を営む所有者との間に資材の提供、収穫物の販売等密接な相互関係が存在していることが明らかになった。 西ジャワ州サラク山を水源としジャカルタ湾に流れ出るチサダネ川の水質と農業活動とのかかわりを明らかにするために、20地点から水を採取し分析を行なった。農村地帯のサンプルからは、高地にもかかわらず無機態リンが検出され、施肥による水質汚染が疑われた。それらの水が浄化設備のない農村では生活用水に利用されていることが懸念された。 さらに、住民が営んでいる小~中規模の淡水魚養殖池21箇所から水サンプルを収集し、水質調査を行った結果、全体の3分の1は溶存酸素量が低く、pHは高い傾向にあった。また、ナマズの養殖池では、高濃度のアンモニア態窒素濃度が検出された。山地の中腹で行なわれる集約的養殖は、ジャカルタ湾などの下流域の富栄養化の原因の一つとなりうることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
西ジャワの養殖池の水質分析の結果、池の底土に顕著な養分蓄積が起こっていることをが推察されたため、土を採取し現地の研究所で分析をする予定であったが、分析が困難であることがわかり、インドネシアから日本国内へ輸入することにした。輸入手続きが年度内に完了しなかったため、次年度に実施することとした。それ以外は、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
西ジャワの養殖池で水質調査結果をもとに、酸素循環が効率的に行なわれれば淡水魚の生産性が向上することがわかったため、地元住民でも運用可能な太陽光エネルギーを利用したアクアポニック装置の原案を作成し、現地の業者に設計、製造を依頼する。完成した装置は直ちに調査対象とするナマズ養殖池に設置する。 また、農村地帯の河川に肥料由来と考えられる水質汚染が認められたことから、農家の施肥実態を聞取り調査から明らかにし、栄養分の流出について検討するとともに、家畜飼養による資源リサイクルと社会経済的効果を明らかにする。
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Causes of Carryover |
養殖池の底土サンプルの分析を現地の研究機関で実施する予定で経費を計上しておいたが、現地で分析できないことになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
底土サンプルの輸入費用と日本での分析試薬の購入費等で使用する予定。
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