2017 Fiscal Year Research-status Report
地域資源活用型小規模持続的農業システムのためのアグロエコロジー研究
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16K08117
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
宮浦 理恵 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (00301549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 健治 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (80349810)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アグロエコロジー / 資源循環 / 富栄養化 / 水質汚染 / 雑草利用 / 淡水魚養殖 / 小規模農家 |
Outline of Annual Research Achievements |
ボゴール地域内の植物資源の利用実態調査を行い、畑地内、畦畔、路傍、河川周辺、空き地等農業生態系のあらゆるところから雑草が採集され、家畜飼料として給餌されている事を明らかにした。草種の選別は厳密ではなく、耕地雑草のみならずシダ植物、作物の逸出、侵略的外来種等が刈りとられており、畜産飼養により域内の植生が管理され資源循環していた。しかし、淡水魚養殖に関しては、鶏糞やペレット飼料等の過剰投入が確認され、養殖池の富栄養化とその水の放出による環境への負荷が懸念された。そこで、ボゴール地域内の淡水魚養殖魚池から土壌を採集し日本へ輸入して化学分析を実施した。水圏の富栄養化の主要因となる窒素とリンを中心に化学分析を行い、土壌肥沃度を評価したところ、地域や生産者に関わらず、養殖池の底土には多量のアンモニア態窒素(19地点の平均値211mg NH4-N/kgDS)と可給態リン酸(19地点の平均値500mg P2O5/kgDS)が検出された。また、2地点において土壌養分の垂直分布を評価したところ、深度50cmもしくは30cmまでアンモニア態窒素と可給態リン酸は高く推移し、これら養分は地下水へ流亡することが強く示唆された。これを踏まえて、淡水魚養殖システムの改善に向けた試験のデータを分析し、一般農家での実用に向けた試算を行う。また地域内資源が循環でき環境負荷を抑えられ、かつ小規模農家の経営的向上が実現可能な体系について、アグロエコロジーの観点から最適デザインを導き出す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地実態調査は順調に遂行しており、小規模農家の経営向上と地域資源を有効に活用した環境負荷とくに水質汚染を引き起こさないファーミングシステムの構築に向けた基礎データを蓄積している。淡水魚養殖池の水質及び土壌肥沃度の評価から、本地域の養殖池では窒素やリンの蓄積が顕著であり、養殖魚の生産性や水圏の富栄養化などに深刻な影響を及ぼしていることが示唆された。具体的な問題点としては、特にナマズ養殖における大量な餌の投入や、水中の低い溶存酸素量、長年に渡る養殖池の使用による土壌養分の蓄積などが挙げられる。淡水魚養殖の改善のため当初はアクアポニック装置を設計・製造し、現地試験を行う予定であったが、コスト面から計画を変更し、太陽光を利用し簡易的に養殖池に酸素が供給できる装置を試行した。現在、ボゴールの研究所で試験を継続しており、継時的に収集しているデータをもとに実用可能か検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
淡水魚養殖システムの改善に向けた試験のデータを分析し、一般農家での実用に向けた試算を行う。また地域内資源が循環でき環境負荷を抑えられ、かつ小規模農家の経営的向上が実現可能な体系について、アグロエコロジーの観点から最適デザインを導き出す。 養殖池の水質と土壌肥沃度の評価から、生産量を維持もしくは向上させ、かつ環境負荷を軽減させることを目的として、現地で普及可能な技術の構築を目指す。水中の低い溶存酸素量を解消する技術には、太陽光パネルを動力源とする水中ポンプの効果を評価する。太陽光パネルは年々その価格が低下し、現地でも導入出来る可能性が高い。一方、これまでの実験プラントレベルで得られた結果からは、日照により直ちに光合成微生物により水面の溶存酸素量は急激に上昇し、これらを効率的に下層と置換、混合することで全体の溶存酸素量を高めることができることが明らかとなった。そこで今年度は、現地の養殖池に装置を設置し、その効果を検証する。また、ナマズ養殖における大量な餌の投入については、現地農家の協力を依頼して、適切な餌の投入量を設定するための基礎的なデータを得る予定である。
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Causes of Carryover |
投稿していた論文の投稿料や超過ページ代金が昨年度中に請求されなかったため。また、投稿準備中の論文の英文校正を年度内に行う予定であったが、準備が整わなかったため。
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