2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K08125
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
伊藤 弘 筑波大学, 芸術系, 准教授 (60345189)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 世界遺産 / 観光対象 / 地方史 |
Outline of Annual Research Achievements |
富岡製糸場およびその周辺について、世界遺産登録時の評価および現在の観光への取り組みについて把握した。構成資産の観光の対象化の程度に差のあることは既に知られているが、歴史的に見て富岡製糸場の建設による周辺の町への影響などについてはほとんど触れられることなく、また観光資源としても「周辺の近代建築」とだけ取り扱われており、その関係性は触れられていない。また、構成資産同士は、車による移動が必要な距離にあり、構成資産全てを観光の対象にできたとしても、点的資源同士を結ぶにとどまり、面的に重層的な価値を生み出すような状況になく、また評価された価値自体も「近代国家としての礎を気づいた」ことであり、来訪者にとっては非常にわかりづらいものといえる。 また、石見銀山についても世界遺産登録時の評価および観光への取り組みについて把握した。石見銀山も富岡製糸場と同様に構成資産の観光対象化の程度に差はあり、構成資産間が離れている。銀山街道周辺には棚田が広がったり山城があるなど、大田市で取り組んでいる「ヘルスツーリズム」の舞台になりそうな資源はあるものの、その対象にはなっていない。また、山城や銀山街道沿いにはツバキが多く自生しており、かつて銀の精錬にツバキを使用していたように、ツバキを使った商品開発なども可能といえる。同様に、かつて使われていた梅は、梅まつりによって記憶が継承されているが、梅を使った商品開発なども行われておらず、資源からは、まだガイド以外の新たな産業に結び付けていない状況にある。 いずれの地域も、世界遺産として認められた価値は巨視的なもので、来訪者にとって分かりづらいものであるため、改めて地域史からも空間や資源の使われ方を踏まえる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
富岡製糸場および石見銀山において、地方史をあたり、世界遺産として評価された価値と比較することで、より来訪者に理解しやすい資源を整理した。 上記2事例は、同じ性格の産業遺産であるが、世界遺産としての価値だけを基準に観光対象としてしまうと、評価の観点が巨視的なものであるあめ、点的資源を結ぶだけになってしまい、その立地する地域にとっては必ずしも正の影響がもたらされるとは言えず、むしろ空間に混乱をきたしてしまう恐れのあることが明らかになってきた。それぞれ地方史から読み解くことで、面的観光資源の開発に結び付けていくことが可能になることが見えてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
今までみてきた石見銀山および富岡製糸場は、産業遺産であった。今後は、長い間遺構であった平泉と村落であり続けてきた白川郷において、同様の調査を行っていく。
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Causes of Carryover |
・雑誌に投稿している原稿の査読が長びき、その掲載費が残った ・史料収集以外の、ゼンリン住宅地図を未購入 上記いずれも次年度に購入・支払う予定
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Research Products
(3 results)