2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K08137
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Research Institution | Building Research Institute |
Principal Investigator |
加藤 真司 国立研究開発法人建築研究所, 住宅・都市研究グループ, 上席研究員 (50523388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉崎 真司 東京都市大学, 環境学部, 教授 (50318622)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 特殊針葉樹皮改良材 / 緑化 / 殺菌特性 / 水分特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
スギやヒノキの樹皮に親水性をもたせた特殊針葉樹皮改良材は、屋上緑化をはじめとした人工地盤上の緑化基盤材として期待が持たれているものの、その特性が十分に把握できていないことが普及に至らない一因となっている。このため、特殊針葉樹皮改良材の特性やその有効な活用方法等を明らかにすることによって、屋上緑化を始めとする人工地盤上の緑化の推進に資することを本研究は目的としている。 2016年度には、特殊針葉樹皮改良材の基本特性である水分特性と殺菌特性を把握するための実験を実施した。具体的には、水分特性試験として特殊針葉樹皮改良材と他の土壌(マサ土、黒土、川砂、パーライト、混合土)それぞれについて、粒度試験・透水性試験・保水性試験・塩類濃度試験を実施した。透水性試験の結果からは、特殊針葉樹皮改良材は川砂と同程度の高い透水性を有することが分かった。一方、マサ土や黒土は透水性能は良くないため、海浜部の土壌として用いた場合に、マサ土や黒土では塩分を含んだ水分の滞留を招くおそれがある。保水性試験では、特殊針葉樹皮改良材と黒土が大きい有効水分体積率を示した。 一方で、緑化工事で多用されているマサ土の有効水分体積率は小さく、散水量を多く必要とする結果が得られた。以上から、特殊針葉樹皮改良材はマサ土や黒土と比較して、植物の成長にとって好ましい水分特性を有していることが分かった。 さらに、特殊針葉樹皮改良材の殺菌特性を調べるため、土壌中病原菌であるフザリウム菌と一般的なセルロース分解菌であるトリコデルマ菌を用いた試験を実施した。本試験は、特殊針葉樹皮改良材と一般土壌において、フザリウム菌とトリコデルマ菌の繁殖菌数の時間経過を調べたものであり、両菌とも一般土壌では時間とともに大きな菌数の増加傾向が見られたが、特殊針葉樹皮改良材では菌数の増加傾向は確認できず、本改良材の高い殺菌特性が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、平成28年度に、水分特性試験として保水力試験と吸水・脱水特性に係るヒステリシス実験を、平成29年度に透水性試験を実施する予定であったが、実験項目や実施方法を精査した結果、平成28年度において、特殊針葉樹皮改良材を含む複数の土壌について粒度試験・透水性試験・保水性試験・塩類濃度試験を実施した。これによって、特殊針葉樹皮改良材の基本的な水分特性が把握できた。 また、特殊針葉樹皮改良材の大きな特性である殺菌特性について、当初計画では、平成28年度から平成29年度において、フザリウム菌やリゾクトニア菌などを対象とした殺菌特性試験を実施する予定であったが、本試験についてもその実施方法を精査した結果、フザリウム菌とトリコデルマ菌に対する殺菌特性の試験を平成28年度に実施することができ、本試験結果として、特殊針葉樹皮改良材が有する高い殺菌特性を確認することができた。 特殊針葉樹皮改良材の水分特性と殺菌特性に関するこれらの試験結果は、平成29年度以降に展開する研究事項の基礎となるものであり、当初の計画よりもやや前倒しで成果が得られているため、進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断している。また、実験の実施と並行して、特殊針葉樹皮改良材を用いた屋上緑化事例や年制度の土壌改良事例の調査を滋賀県と兵庫県において実施したところであり、これらの調査結果は、今後の本研究の応用面での成果の一助になると期待しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の特殊針葉樹皮改良材の水分特性から、植物の耐潮性を向上させる可能性が示唆された。このため、東京都市大学キャンパス内の圃場にて、異なる土壌に植栽した植物に対して、異なる濃度の人工海水を灌水して、その生育状況を確認する試験植栽を平成29年度に実施する。用いる土壌は、特殊針葉樹皮改良材・マサ土・一般土壌(商品名:基本の土)の3種類を候補として検討している。また、試験植栽に用いる植物は、シラカシを中心に選定・調達作業を進めているところである。 さらに、平成28年度に実施した特殊針葉樹皮改良材の殺菌特性試験において、同改良材の高い殺菌力が確認できたが、この結果からは、特殊針葉樹皮改良材を用いて植物を育生させた場合に、根腐れ病等にかかりづらいことが想定される。もしもそうならば、灌水頻度を下げた簡易な維持管理方法が提言できる可能性がある。このため、底面滞水型の植木鉢を用いた試験植栽を平成29年度に実施する。用いる樹種については選定中であり、実施場所は東京都市大学を予定している。また、併せて特殊針葉樹皮改良材を用いた施工事例の国内調査を引き続き実施する。 平成30年度は、平成29年度の試験植栽の結果を受けて、より実際的な試験植栽を予定している。例えば、耐潮性確認試験植栽として、海水面に接近した沿岸部おける試験植栽などである。また、3ケ年度の成果をまとめて、特殊針葉樹皮改良材を用いた植栽基盤作成のための指針を作成する。
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Causes of Carryover |
平成29年度は試験植栽を予定しているが、なるべく多くの植栽鉢によって試験植栽を実施することが望ましい。このため、平成28年度で執行できなかった550円については、平成29年度の試験植栽の植栽鉢の購入に充てることを予定している。なお、平成28年度で見執行の550円は、最低旅費に満たらないほどの少額で、かつ筆記具等の購入には科研費がなじまない判断されたことから、執行できなかった予算である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に実施する特殊針葉樹皮改良材を用いた試験植栽の植栽鉢(1個)の購入に充てることを予定している。
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