2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K08147
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
畑 信吾 龍谷大学, 農学部, 教授 (40238001)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クサネム根粒菌 / 形質転換イネ / レグヘモグロビン / 人為的根粒形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の実施状況報告書において単離した約10系統のクサネム根粒菌がすべてクサネム実生の生育を促進すると報告したが、のちに再現性に乏しいことが判明した。そこで、室内の清潔な条件で採取したクサネム(Aeschynomene indica)種子を休眠打破・表面殺菌して発芽させたあと無窒素培地を含む土壌に移植し、各菌系統を注意深く接種して25度Cで12 h明条件/12 h暗条件で数週間生育させた。その結果、SET10とSAW1と仮に名付けた2系統のみが、再現性よくクサネム実生の生育を促進することがわかった。生育促進をうけたクサネムには花や莢が見られたので、十分な窒素栄養を得ていると思われた。また、いずれの菌系統によっても、多数の根粒が着生し、その一部はレグヘモグロビンによる鮮やかなピンク色であった。さらに、少数ではあるが茎粒も見られた。 次に、16SrDNAの配列に基づいて、それらの菌系統の同定を試みた。予備的な解析の結果は、意外なことに、SET10はトマト青枯病菌Ralstonia solanacearumと最も近縁であり、SAW1はPantoea sp.であることが示唆された。クサネムの仲間に根粒を着生するのはBradyrizobium属の細菌のみであるというのが常識であったので(Giraud et al. PNAS 26: 14795-14800 (2000); Science 316: 1307-1312 (2007))、今回の結果は驚きに満ちたものである。現在、形成された根粒から細菌を再単離して、その同定を進めているところである。 このほか、たとえばレグヘモグロビンプロモーターの下流に構成的なCCamK遺伝子を繋いだコンストラクトなど、形質転換イネ作成の準備として予定していたコンストラクトの構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
担当者の新設研究室には9人の学生が分属してきたが、現在就職活動の最中であるため、実験にはエフォートを割きづらいようである。担当者自身も教務や雑務に追われがちであるが、頑張り続けたいと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
根粒菌を蛍光標識するための予備実験として、Bradyrhizobium sp. AT-1株に平成28年度に作成した形質転換用ミニTn5コンストラクトを通常の接合法で導入し、期待通りdsREDやsGFPの蛍光を発する形質転換菌を得た。しかし同じ手法をSET10とSAW1に適用しても、蛍光標識はできなかった。そこで、エレクトロポレーションを試みたが、やはり不成功に終わった。今後はFreeze-Thaw法など、さらに別の形質転換法を試してみたい。 上記と並行して、イネの形質転換を進めるべく、予備実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)前述のように、平成29年度も担当者がほぼ単独で研究を進めていたため、次年度使用額を生じた。
(使用計画)しかし平成30年6月を過ぎると分属4年生生諸君の就職活動もほぼ収束し、10月以降は新たに3年生が13-14人分属されてくる予定なので、研究費の使用額は大幅に増えると予想される。全体としては順調にかつ効率よく使用しているとおもわれる。
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