2017 Fiscal Year Research-status Report
α/β-ヘテロペプチドを基盤とした新規構造と機能の創出
Project/Area Number |
16K08157
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾谷 優子 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (60451853)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 二環性アミン / コンホメーション / アミノ酸 / タンパク質ータンパク質相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗体医薬やペプチド医薬の活性モチーフを、短いペプチドで代替することは重要な課題である。柔軟な構造を持つ短鎖ペプチドに立体構造を制限した非天然アミノ酸を導入することで取りうる構造を制限し、活性コンホメーションの安定化などに利用することが可能になると考えられる。本研究では、1種類の骨格を持つアミノ酸について基礎的な構造特性を得るべく、短いペプチドを用いて近傍のアミノ酸に対する構造効果を調べた。 当教室で開発した非天然アミノ酸である二環性βープロリンは最小構造単位である単量体からよく制限された構造を取る。また、通常プロリンなど三級アミド結合はシスートランス平衡が存在しシスアミド体とトランスアミド体の両方をを取るが、二環性アミノ酸はシス体またはトランス体のみを取るように制限可能である。 この非天然アミノ酸の基礎的な構造特性を調べるためにαーアミノ酸を二環性アミンに結合させたモデル2量体分子を用い、αーアミノ酸の取りうるコンホメーションを調べた。 また、トランスアミド体のみを取る二環性βーアミノ酸と天然のαーアミノ酸を互い違いに連結したα/βーヘテロペプチドについて、構造解析を行った。 さらに、トランスアミド体のみを取る二環性βーアミノ酸を連結したホモオリゴマーが細胞のがん化などに関係するタンパク質ータンパク質相互作用であるp53-MDM2/MDMX 相互作用を阻害することについて予備的な結果を得ていたが、本年度は構造類似化合物を多数合成し、活性評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
αーアミノ酸を二環性アミンに結合させたモデル2量体分子については、各種分光学的手法を用いて構造解析を行った。プロトンNMRのカップリング値などからαーアミノ酸主鎖構造を見積もり、また化学シフトの温度依存性により温度に対する構造安定性を調べた。各種溶媒中の分子動力学シミュレーションを行った。その結果、αーアミノ酸のみからなるジペプチドと比較して二環性アミンに結合したαーアミノ酸は取りうるコンホメーションが制限されており、より伸張した構造を取りやすくなっていることを明らかにすることができた。 また、α/βーヘテロペプチドについては、合成した2残基(2量体)から8残基(8量体)のペプチド分子について構造解析を行った。前述のプロトンNMRにより、残基単位での主鎖の構造情報を得た。また、2次元NMRや分子動力学計算により全体構造に関する知見を得た。その結果、二環性βーアミノ酸部分の構造は8量体などの比較的大きな分子においても非常に良く制限されており、全体として伸張したヘリックス構造を取ることを明らかにした。 p53-MDM2/MDMX相互作用を阻害する分子については、共同研究者とともに新規合成化合物の活性評価を行った。化合物デザインにはドッキングシミュレーションも活用した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年度は、αーアミノ酸と二環性アミンの2量体モデルの研究およびα/βーヘテロペプチドの構造研究を論文化する。また、タンパク質ータンパク質相互作用阻害分子の研究については、化合物の構造活性相関から結合モデルを導き、ヘリックス構造と阻害活性との関連性を明らかにしたい。 環骨格を持つ非天然アミノ酸をαーアミノ酸からなる環状ペプチドに組み込み、コンホメーションや膜透過性、加水分解酵素に対する耐性について調べる予定である。
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Research Products
(20 results)