2016 Fiscal Year Research-status Report
環境調和型金属カルベノイド反応の開発:触媒創製,不斉反応開発,天然物合成への応用
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16K08158
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
矢倉 隆之 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (70220126)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南部 寿則 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (80399956)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 金属カルベノイド / ジアゾ化合物 / ロジウム触媒 / オキソニウムイリド / [2,3]-シグマトロピー転位 / C-Hアミノ化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジアゾ化合物の金属触媒による金属カルベノイド反応は「誰もが使える」反応で,かつ「環境調和型」である数少ない反応の一つであるが,その有機合成への利用は限られていた。そこで,金属カルベノイド反応のさらなる利用拡大を目指し,回収・再利用が容易な新触ロジウム媒創製と,新規金属カルベノイド反応の開発,さらに天然物合成への応用をおこなう。本研究では,ロジウム触媒の磁性鉄ナノ粒子であるマグネタイトへの担持をおこない,回収再利用が容易なロジウム触媒を創製する。さらに,金属カルベノイドを用いる連続的オキソニウムイリド形成-[2,3]-シグマトロピー転位およびスルファマートやカルバマートのC-Hアミノ化反応を中心とした新規な立体選択的反応の開発,ならびにこれらの反応を巧みに用いた創薬展開が期待される種々の生物活性天然物の合成をおこなう。生物活性天然物としては,抗トリパノソーママクロリドactinoallolide A や細胞毒性を持つFR901464やirciniastatin A を目的化合物とする。特にactinoallolide A は2015 年に単離構造決定が報告された天然物であり,「顧みられない熱帯病 (Neglected Tropical Diseases, NTDs)」と呼ばれ,WHOが「人類の中で制圧しなければならない熱帯病」と定義している疾患であるアフリカ睡眠病やシャーガス病などのトリパノソーマ属原虫が原因となる感染症(トリパノソーマ症)の治療薬候補として期待されている。その構造活性相関研究への展開を視野に,全合成のみならず,類縁体合成を行なう。これらにより金属カルベノイド反応の有用性を広く有機合成化学界に示し,広く一般的に用いられる反応へと成長させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁性鉄ナノ粒子担持ロジウム触媒の創製:磁性鉄ナノ粒子にカルボキシ基を導入し,酢酸ロジウムとの配位子交換反応を種々の条件で検討中。 ロジウム触媒C-Hアミノ化続くビニル化による立体選択的四置換炭素構築反応の開発と免疫抑制活性ミリオシン類の合成:L-酒石酸から容易に合成できる5-シリルオキシメチル-2,2-ジメチル-4-スルファモイルオキシ-1,3-ジオキソランをヨードベンゼンジアセタート存在下酢酸ロジウム(II)と反応させると, C-Hアミノ化が立体特異的に進行し,対応するオキサチアジナン N,O-アセタールが得られた。これを臭化ビニルマグネシウムおよび塩化亜鉛と処理すると,立体選択的にビニル化体が得られた。さらにミリオシン,ミセステリシンD ,スフィンゴフンギンEの全合成を達成した。 立体選択的ロジウム触媒O-イリド形成―[2,3]-転位反応の開発と抗菌活性タニコリドの合成:市販のL-リンゴ酸を出発物質として,5-アリルオキシ-6-シリルオキシ-2-ジアゾ-3-オキソヘキサン酸メチルを合成し,触媒量の酢酸ロジウム(II)と加熱還流させたところ,立体選択的O-イリド形成―[2,3]-シグマトロピー転位が進行し,3-オキソテトラヒドロフランが収率93%で,単一のジアステレオマーとして得られた。さらにタニコリドおよびその類縁体の全合成を達成した。 連続的ロジウム触媒反応の開発:7-アミノスルホニルオキシ-2-ジアゾ-5-メタリルオキシ-3-オキソヘプタン酸メチルを触媒量の酢酸ロジウム(II)と反応させたのち,反応後雲合物にヨードベンゼンジアセタートを加えると,O-イリド形成―[2,3]-転位続くC-Hアミノ化がワンポットで位置選択的および立体特異的に進行し,抗トリパノソーマ活性アクチノアロリドAのフラノン部に相当するオキサチアジナンN,O-アセタールの立体選択的構築に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
磁性鉄ナノ粒子担持ロジウム触媒の創製:磁性鉄ナノ粒子への官能基導入と酢酸ロジウムとの配位子の方法や順序を種々検討する。また,磁性鉄ナノ粒子以外の担持可能な物質たとえばガラスなどを検討する。 新規金属カルベノイド反応の開発:ロジウム触媒C-Hアミノ化続くビニル化による立体選択的四置換炭素構築を達成しているが,ビニル基以外の単純アルキル基の導入はこれまで成功例がなかった。現在,メチル基の導入に成功しており,さらに検討を続け,幅広い応用へと展開する。 また,ロジウム触媒O-イリド形成―[2,3]-転位反応ではこれまで5員環形成が主で,6員環形成には問題点が多かったが,現在,6員環形成にも有効な反応条件を見出しており,一般性を検討する。 天然物合成への応用:連続的ロジウム触媒O-イリド形成―[2,3]-転位反応-C-H アミノ化反応の予備実験ができたので,トリパノソーマ活性アクチノアロリドAの合成へと展開する。先のロジウム触媒O-イリド形成―[2,3]-転位反応による新規6員環合成法をFR901464 等の天然物合成へ応用する。
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Causes of Carryover |
磁性鉄ナノ粒子担持ロジウム触媒の創製に関しては,触媒分子をナノ粒子に担持させるため,特別な技術が必要で他の専門技術者による協力が必要となる。現時点では,自らが遂行可能な部分のみをおこなっている。そのため,今年度は謝金の支出がなく,謝金支出予定額より若干少ない額が未支出となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は専門技術者の協力を仰ぎ,謝金として使用する計画である。
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