2016 Fiscal Year Research-status Report
高反応性活性種の新たな活用法に立脚した化学反応開発
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16K08159
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
谷口 剛史 金沢大学, 薬学系, 助教 (60444204)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ベンザイン / ラジカル / ボラン / 環化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
高反応性活性種を活用する合成手法を開発するべく研究計画に沿って実験を行い、本年度では以下のような結果を得た。 (1)B-S結合を有するN-ヘテロサイクリックカルベン-ボランを合成し、トリフルオロメタンスルホン酸 2-(トリメチルシリル)フェニル誘導体とフッ化物イオンから発生させたベンザインとの反応を検討した。しかし、硫黄原子のみがベンザインに導入されホウ素原子は導入されないことがわかった。これはボラン錯体の硫黄原子ががB-S結合を保持したままベンザインを攻撃し、その後フッ化物イオン等によってホウ素が捕捉されてしまうためだと考えられた。この結果より、ベンザインの発生法を変える必要があることが示唆された。 (2)歪んだ10員環ジインから発生させたp-ベンザイン(ビラジカル)とN-ヘテロサイクリックカルベン-ボランの反応を行ったところ、予想通り、1,4-ヒドロホウ素化反応が進行することが明らかとなった。ビラジカルが両方とも水素化された化合物も得られたが、これは重水素化実験により反応機構の解明に役立った。反応機構はラジカル経路が主たるものであったが、溶媒によってイオン経路が併発することが明らかになった。また、この研究の過程でアルキンへのボリルラジカルの付加から始まる新しいラジカル環化反応を新たに見出すことができた。本反応では10員環ジインからホウ素原子を有する6,7,8,9-テトラヒドロベンゾ[a]アズレン誘導体を合成できることがわかった。 (3)テトラインと塩基を用いたGarratt-Braverman環化反応の検討を始めたが、ほどなくHoyeらの研究グループによって研究代表者が研究計画に記載したものと全く同じ反応が報告された(Nature, 2016, 532, 484)。このため、残念ながら本研究計画は中止せざるを得なくなったが、そのリソースを別の研究計画の立案・遂行等に充てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベンザインとB-S結合を有するボランとの反応では、目的の化合物を得るには至っていないが、問題点を明らかにすることができたので、今後、改善が可能であると考えられる。一方、p-ベンザインとN-ヘテロサイクリックカルベン-ボランの反応では当初の目的を達成できただけでなく、その過程で新しいラジカル反応を見出すことができたため、当初の計画以上の成果が得られている。テトラインと塩基を用いたGarratt-Braverman環化反応の研究計画は他のグループに先行されてしまったが、研究の初期に中止を決断できたため、時間と資金を無駄にすることは避けられた。その分のリソースを類似の反応開発に充てることが可能になり、別の触媒反応に関する新しい知見を得たり、新しい反応開発の計画を練ることができた。また、共同研究者であるCurran教授を訪問することを次年度に予定していたが、本年度に偶然Curran教授が来日する予定ができたため、本学にて直接議論する幸運に恵まれた。その機会に、これまでのデータ解析と今後の研究計画について非常に有意義な議論ができた。したがって、研究計画の1年目、全体的には研究が順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については以下の3つの通りである。 (1)ベンザインとB-S結合を有するボランとの反応ではベンザインの発生法を変えることによって目的物を得ることを検討する。また、N-ヘテロサイクリックカルベン-ボラン以外のボラン錯体を活用することによって、目的の反応を達成することを試みる。 (2)p-ベンザインとの反応によって歪んだアルキンとボランとの反応に関する知見が多数得られたため、研究対象を種々の歪んだアルキンとボラン錯体の反応にまで広げて、新しい合成手法の開発を行う。 (3)テトラインと塩基を用いたGarratt-Braverman環化反応を中止したので、この計画を類似の基質を活用した新しいπ共役系化合物の合成手法の開発に変更して今後推進する。具体的には複数のアルキンを有する化合物からホウ素原子を含む新しい複素環合成等を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究で必要とした試薬類が比較的安価であったことや、合成が必要な原料に関しても合成法を多少改善して収率良く原料を得ることができるようになり、当初の予定より試薬代を節約できたことが主たる理由である。また、反応試薬として必要であったいくつかのボラン錯体を共同研究先から供与してもらえたこともコストの節約に貢献した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予算の大半を消耗品購入に充てることは計画から変更はない。次年度では反応機構の解明や厳密な反応条件の管理が必要な実験を想定しているため、そのような特殊な実験を行うための器具や小型の実験装置の購入に繰越金を充てることを考えている。また、予定している分析の中で、自らの所属機関で行うより、共同研究機関や民間企業へ依頼したほうが速やかに信頼性のあるデータが得られる測定法があることが判明したため、その測定料やサンプル送付料の一部を本助成金から支出する予定である。なお、共同研究者であるCurran教授が所属するピッツバーグ大学への訪問を次年度に計画していたが、本年度に先方が本学に来訪する幸運に恵まれた。その機会に、直接有益な議論を行うことができたので、次年度計上していた海外旅費は上記に述べたような実験遂行のための研究経費に充てる予定である。
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Research Products
(8 results)