2017 Fiscal Year Research-status Report
中性物質廃出型反応を基盤とした環境調和型芳香族群の効率的合成法の開発
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16K08169
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
澤間 善成 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (80552413)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中性物質 / 鉄触媒 / 不均一系触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機合成では、ターゲット分子をいかに効率よく合成するかが重要であり、更に廃棄物低減型方法論は環境に優しいクリーンな方法論として注目されている。反応の進行に伴い副生する廃棄物が中性であることは、反応容器の劣化を抑制できるだけでなく、反応処理工程の簡略化へと繋がる。我々は、水・メタノール・シラノール・水素などの中性物質排出型のクリーンな骨格構築法の開発を目指し、研究を推進している。触媒としては安価な鉄塩や回収・再利用可能な不均一系触媒などを駆使している。 2年目の実績としてまず、不均一系パラジウム炭素を触媒として、酸素酸化を伴うベンジルアルキルエーテル類の炭素―水素結合官能基化を基盤としたメタノールの挿入反応や、不飽和環状アルカン類の脱水素的芳香化反応を開発した。これらは、水や水素のみを排出するクリーンな手法として評価されている。また、申請内容であるアルコールの脱水素反応の開発を基盤とした他の官能基変換法や、中性アルカンの脱水素反応への応用ならびに還元反応への適用などでも研究テーマを拡充することができた。 一方、芳香族アルデヒドを基質にしてシリルトリフラートとピリジン誘導体を作用させると、ピリジニウム塩が得られる。この塩に対して、ビニルシリルエーテルを求核種として作用させると、ベータ-シロキシアルデヒドが得られる。アルデヒドを基質としてビニルシリルエーテルを求核種とした向山アルドール反応は、生成物がアルデヒド体であるため過剰反応を抑制することが困難である。この副反応を抑制しつつ、新たな選択性を有する芳香族アルデヒド選択的骨格構築法を開発した。得られた生成物のシロキシ部を鉄触媒的に変換し、中性シラノールを脱離基とした新たな変換法としても応用展開した。 その他にも、リン酸エステルや有機触媒を用いた方法論と組み合わせ、数多くの成果を上げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した計画においては、概ね順調に成果を挙げることが出来た。更に、申請計画に留まることなく、得られた知見を元に臨機応変に対応し、数多くの成果へとつなげた。不均一系触媒を用いた水素のみが排出される脱水素反応は、アルコールや不飽和環状アルカンを基質とした酸化反応に適用し論文として公表するに至っている。触媒の再利用やスケールアップなども可能であり、環境負荷低減型の酸化反応として有用である。また、基質を複素環化合物へ適用させることで、別の骨格変換が起こることも見いだしつつある。基質適用拡大や、得られた知見を更に発展させることで、多くの新規反応の開発に繋がることが期待される。 シリルトリフラートとピリジン誘導体による芳香族アルデヒド由来のピリジニウム塩を利用した新規反応開発に成功した。この塩や、様々な求核種導入へと適用した成績体は、ベンジルシリルエーテル構造を有する。すなわち、これら化合物は鉄触媒的に脱保護することなく多様な官能基へと変換可能と考えられる。様々な求核種と、その後の中性物質のシラノールを脱離基とする変換反応へ応用することで、ステップエコノミーに優れた方法論へと展開可能と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述した様に、不均一系触媒を用いた脱水素反応(水素を廃棄物とする反応)やベンジルシリルエーテルのシロキシ部を脱離させる鉄触媒的反応に重点を置き、研究開発に取り組んでいる。前者の反応では、基質を複素環化合物などへ拡充することで、新たな酸化反応へ開発展開を推進している。分子量2の水素のみを排出するアトムエコノミーに優れた方法論として確立するのみならず、副生する水素の有効利用も検討していく。例えば、第2級アルコールである2-プロパノールの不均一系触媒的脱水素反応により、系中で生成した水素を用いた還元反応や金属の活性化剤とした反応へと応用可能と考えている。 また、シリルトリフラートとピリジン誘導体を芳香族アセタールへと作用させるとベンジルメチルエーテル構造をもつ塩や、成績体へと変換されるはずである。この化合物を基質に鉄触媒的な変換法を適用すると、メタノールを廃棄物とする方法論として展開可能である。この手法は、脂肪族アルデヒドを基質とした際には原料回収となる。すなわち、脂肪族アルデヒド存在下、芳香族アセタールのみを変換可能と考えられる。アセタールはアルデヒドの保護体であるため、保護体の選択的な骨格変換として興味深い反応を開発する。 上述した、水素・シラノール・メタノールなどの中性物質排出型の反応を、不均一系触媒や鉄触媒に限ることなく、多様な観点から研究を拡充していく予定である。
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Causes of Carryover |
計画は概ね順調に進行しており、更なる発展性が見込める新たな研究テーマへと展開している。当初予定していた計画と発展研究遂行のために反応装置などの購入に使用する次年度予算の確保が必要となり、未使用額が生じた。論文や学会発表による成果の発信と、日本国を始めとした世界の化学の発展のために、旅費・論文投稿費等の予算も次年度に確保する必要性があった。
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Research Products
(29 results)