2017 Fiscal Year Research-status Report
パーオキシ中鎖脂肪酸を基軸とする脳神経疾患改善薬の開発研究
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16K08170
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
伊藤 彰近 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (10203126)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パーオキシ中鎖脂肪酸 / gem-ジヒドロパーオキシド |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の検討で、既にgem-DHPの一つである12AC3Oが脳神経疾患に対する候補化合物として有望であることを見出している。そこで本年度は、特にその作用機序の解明に主眼を置き検討を行った。調査する神経変性疾患として、活性酸素種(ROS)が関与すると考えられているALS(筋萎縮性側索硬化症)を選択した。その主たるメカニズムとしては、ROSによる酸化ストレスにより異常タンパク質の凝集が起こり、軸索輸送障害が引き起こされると考えられている。従って、この酸化ストレスを抑制することの出来る、いわゆるレドックスモジュレーター(生体内酸化還元状態改善薬)の適用が神経保護に有効と考えられる。申請者は昨年度の評価で、gem-DHPの一つである12AC3Oが、細胞内の不溶性タンパク凝集体形成を抑制することを見出している。実際、ESRによるスピントラップ法により、gem-DHPはラジカル消去医薬品として知られているエダラボンと同等のヒドロキシラジカル消去能を有することを明らかにした。そこで本年度は、さらなる詳細な作用機序の解明のために、その可能性の一つであるSOD1(Superoxide dismutase 1)の凝集に対する効果を検討した。即ち、SOD1のアミロイド化に対してどのような効果を示すか調査したが、残念ながらSOD1のアミロイド化に対してはそれほど大きな抑制効果をもたらさない事が分かった。この結果より、SOD1の線維化・オリゴマー化には直接的な効果はなく、その他の形式の凝集に効果があるか、あるいは、細胞内での他のプロセスに作用することで、培養細胞内でのSOD1凝集を抑制しているのではないかと現時点では推定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に、脳・神経疾患に対する候補化合物としてgem-DHP、特に12AC3Oが有望であることを突き止めており、概ね順調に進展していると考えている。 一方、作用機序に関しては、申請者が見出した細胞内不溶性タンパク凝集体抑制効果の解明のために、SOD1凝集に対する効果を検討した。しかしながら、予想に反して12AC3O等がSOD1の繊維化、オリゴマー化に対して直接的な抑制作用はそれほど大きくないことが分かった。この結果より、細胞内の他のプロセスにおけるいずれかのレドックス反応に影響を与えているものと推定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の検討で、SOD1の線維化・オリゴマー化には直接的な効果はないことが判明した。従って、細胞内での他のプロセス等に作用することで培養細胞内でのSOD1凝集を抑制している可能性が高いことが示唆された。そこで今後は、検討範囲を拡げて他のタンパク質等に対する効果を検証していく予定である。 一方、検討する化合物種としては、これまで通り実績のある12AC3Oを中心としたgem-DHPを用いての検討を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
gem-DHPの合成に関して、ターゲット化合物が12AC3Oおよびその類似化合物に絞られたこと、及び学生の合成スキルが上がり、使用する試薬及び溶媒、精製のためのシリカゲル等の使用量が減り、物品費の大幅な減少に繋がった。本年度は、本申請の最終年度にあたるため、より広範囲での作用機序解明のために、より多くの化合物(種類、量とも)の合成が必要になることが予想される。また、本年度は成果発表を行う予定であり、それらの費用としても次年度使用額を充てる予定である。
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