2017 Fiscal Year Research-status Report
クロストリジウム感染症治療薬を指向したマクロライドの全合成と抗菌力発現機構の解明
Project/Area Number |
16K08175
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菅原 章公 東北大学, 薬学研究科, 助教 (50581683)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 全合成 / ルミナミシン / 嫌気性菌 / 10員環ラクトン / マクロライド / 酸素架橋シスデカリン / 偽膜性大腸炎 / エノールエーテル |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的;現在、感染症治療の問題点の一つに嫌気性菌に対して有用な治療薬が少ないことがあげられる。このような中、ルミナミシン(1)は嫌気性菌(特にクロストリジウム属)選択的な抗菌作用を有することが判明し、偽膜性大腸炎等の治療薬のリード化合物として期待されている。さらに1は、三環性酸素結束シスデカリン-マクロライドの特異な構造を有している。従って、研究代表者は(A)の前例のない構造の効率的かつ実用的な全合成法の構築と構造活性相関の解明。(B)1の活性が、シスデカリン部分の類似天然物の活性とは異なる活性を示す現象の解明。(C)構造単純化体の創製。の三点を目的に研究を行うこととした。 研究成果;まず、1の効率的かつ誘導化が可能になる全合成経路の達成を目指した。すなわち、大環状エノールエーテルマクロライド2と三環性酸素結束シスデカリン3に分割し、合成後半に収束的に中央部の10員環を構築する経路を考案した。これまでの研究で、2と3の合成は完了し、それぞれグラムスケールでの供給を可能にした。しかしながら、現在までに効率的な10員環構築が困難であるため、研究代表者は三置換オレフィン含有高歪み10員環ラクトンの構築を目指すこととした。以前に開発した合成経路に従いアルデヒドを有する三環性酸素結束シスデカリン4と1の上部を簡略化したヨウ素体5を調製した。種々検討した結果、5にt-BuLiを作用させ、4に対して求核攻撃を行ったところ所望のカップリング体を収率良く得ることができた。得られたカップリング体をセコ酸に導いた後、椎名ラクトン化の反応によって望みの10員環を得ることに成功した。10員環構造は、二次元NMRによって確認した。本研究によって、三環性酸素結束シスデカリンと10員環ラクトンをはじめて結合させることに成功した。今後、三置換オレフィンの構築を経て、ルミナミシンの全合成の達成を目指していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、ルミナミシンの全合成経路の確立を達成しているはずだったが、三環性酸素結束シスデカリンとルミナミシンの上部とのカップリング及び10員環構築に想像以上の時間がかかってしまった。したがって、やや遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の予定よりは遅れているものの、目標であったルミナミシン部分骨格である三環性酸素結束シスデカリンと連結した10員環ラクトンの構築を達成することができた。そこで本年度は、まずこの10員環ラクトン体の大量供給を行い、全合成を達成できる量を確保する。同時に、この中間体から対応する三置換オレフィンの構築を試みるとともに研究代表者らが開発した方法論を用いた大環状エノールエーテルの構築を経て、ルミナミシンの全合成の達成を目指す。 全合成達成後は、以下のアプローチで活性評価を行う。ルミナミシンの活性がシスデカリン部分の類似天然物の活性とは全く異なる活性を示すことに対して、その機構の解明を目指すために、各フラグメントの抗嫌気性菌活性の精査を行う。研究代表者は、既に、ルミナミシンの上部フラグメントにはクロストリジウム属に対して抗菌活性が無いことを確認しており、その活性発現にはルミナミシンの中及び下部が重要な役割を果たしている可能性を見出した。従って、下部のみの誘導体や架橋構造を持たない誘導体、上部と10員環が結合した誘導体などを設計、合成、評価していく。加えて、合成中間体に関してもNMRによる溶液中の構造解析を行うことで、三次元構造と活性がどのように影響を及ぼすかを検討する。 最終的にこれらの情報を基に、詳細な構造活性相関を解明し、優れたリード化合物の創製を目指す。
|