2017 Fiscal Year Research-status Report
π-ベンジルパラジウムのC-H結合活性化能を基軸とする脱水型分子変換法
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16K08179
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
氷川 英正 東邦大学, 薬学部, 准教授 (20550619)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パラジウム / 水 / ベンジルアルコール / 脱水型ベンジル化 / グリーンケミストリー / 炭素-水素結合活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、環境に優しく、効率の良い有機合成法の開発を目的として、水溶性パラジウム触媒を用いたベンジルアルコールの活性化と触媒的ベンジル化反応への応用に関する研究を行っている。今年度は、2-モルホリノアニリンを求核剤とするN-ベンジル化/ベンジル位ベンジル化連続反応を達成した。 はじめに、2-モルホリノアニリン、ベンジルアルコール(5当量)、酢酸パラジウム(5 mol%)及び水溶性ホスフィン配位子(TPPMS, 10 mol%)をシールドチューブ中、100℃で20時間加熱した。反応溶媒として水のみを用いた場合、ほぼ定量的に目的物を与えた(95%)。一方、水の代わりに有機溶媒を用いた場合、収率が大きく低下した。さらに、Pd触媒あるいはTPPMSを用いない場合、反応は進行しなかった。 反応機構を解明するため、D化したベンジルアルコールを用いた速度論的同位体効果を調べた。その結果、KIE = 2.7が示されたことから、ベンジル位C-H結合の切断が律速段階の1つであると考えられる。さらに、アニリンの置換基効果を調べるため、Hammett studyを行ったところ、反応定数ρは負の値(-2.2)であることから、遷移状態におけるカチオン中間体の形成が示唆された。 以上、本反応は有機溶媒中では進行せずに、水を溶媒としたときにのみ起こる特徴的な反応であることから、反応場としての水の特性(疎水性相互作用や高い水素結合能)を積極的に利用することによって達成できたものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2-モルホリノアニリンを求核剤とする脱水型N-ベンジル化/ベンジル位ベンジル化連続反応を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
ベンジル位C-H結合活性化を基軸とする効率的な複素環合成を行う。
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