2017 Fiscal Year Research-status Report
3-aza-Cope-Mannich連続反応によるアルカロイドの網羅的構築法開発
Project/Area Number |
16K08183
|
Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
坂井 健男 名城大学, 薬学部, 准教授 (90583873)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 転位反応 / N-多環式複素環 / 連続反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
複雑な含窒素縮環骨格は、生理活性を有する多くの天然物に広く存在している。そのため、これらの複雑な骨格を一挙に構築する手法の開発は、天然物合成やそれに類似した医薬品探索研究に貢献する重要な研究である。我々は、本研究課題に於いて、従来よりほとんど報告例がない3-aza-Cope転位を含む連続反応について検討を行い、ピペコリン酸由来の6員環単環性基質から、7-5-5員環が縮環した含窒素三環性縮環システムを一工程で得る手法を開発した。 1)2-(1-メトキシビニル)ピペリジンをアセトニトリル中、炭酸カリウム存在下、1,2,4-トリブロモブタンと反応させると、環化スピロ化-脱離反応-3-aza-Cope転位-Mannich反応という四種類の反応が一挙に進行し、デカヒドロ-4a-アザシクロペンタ[cd]アズレン骨格を有する化合物が生成した。収率は34%と中程度ながら、起きている連続反応の数を考えると十分な収率であると考えている。 2)2-(1-メトキシビニル)-N-(ペンタ-4-イン-1-イル)ピペリジンを、金触媒で処理すると5-exo-dig環化、3-aza-Cope転位-Mannichの三種類の反応が一挙に進行し、デカヒドロシクロペンタ[b]ピロロ[1,2-a]アゼピン骨格を有する化合物が生成することを見出した。この骨格は、ステモナミンやセファロタキシンなどのアルカロイドに多く見られる骨格であり、これらの短段階全合成への道を開くものである。当初は、反応性がやや低く多くの触媒量を必要としていたが、条件を精査した結果、基質に対して1%の触媒を用いただけで、7割以上の収率で連続反応を進行させることに成功している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、最適条件の確立および一定レベルの基質一般性の確立までを目指していた。非常に良い条件は見つかってきたものの、同条件下での基質一般性については、まだ二種類の基質でしか検討できておらず、やや遅れていると評価せざるを得ない。 この原因の一つとして、生成物がビニルエーテルの位置異性体混合物となってしまい、反応の解析に予定外の時間を要してしまったことが挙げられる。今年度予定している基質一般性確立に向けて、位置異性体を共通の化合物に誘導する手法の開発も行いたい。 その一方で、確立した条件においては、当初期待していたよりも遥かに少ない1 mol %という触媒量で、7割を超える好収率を達成できており、世界に印象づける良い反応の開発が行えているという自負はある。今年度、一層の巻き返しをはかりたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)前年度までに最適化を行った金触媒を用いるエンドdig環化-3-aza-Cope転位-Mannich連続反応に関する、基質一般性の検討を行う。アルキン部位とピペリジン環をつなぐリンカー部分、アセチレン末端の置換基、原料の含窒素複素環の環サイズやベンゼン環との縮環など、種々の基質での一般性を検討する予定である。 2)現在、得られている生成物は、ビニルエーテルの位置異性体混合物となっており、解析に時間を要する原因となっている。そのため、これを加水分解して単一のケトンに誘導する条件検討を実施する。生成物を単一化合物とすることで、反応検討の時間短縮がはかれ、より早い研究の進展が望める。 3)ベンゼン環と縮環した基質を用いて反応をかければ、セファロタキシンの基本骨格が得られると予想される。現在、この原料となる基質を短工程で合成すべく、研究を展開している。うまく、基質が得られれば転位反応を実施し、さらにはセファロタキシンの世界最短合成を目指して研究を展開する。
|
Causes of Carryover |
基質一般性の検討やや遅れたために、この検討に使用する予定であった試薬(消耗品)や器具を購入しなかった。これらは、研究が進展する今年度は必要になるために、予定通り消費する予定である。
|