2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K08189
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 勝彦 東北大学, 薬学研究科, 助教 (80400266)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 機能性薄膜 / フェニルボロン酸 / ドラックデリバリーシステム / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
フェニルボロン酸(PBA)が過酸化水素によって分解する反応とグルコースオキシダーゼの酵素反応を組み合わせることで、糖尿病患者の血糖値に応答して速やかにインスリンを放出するナノカプセルのおよびナノ粒子を調製することを目的に研究を行った。血糖値の上昇に応じて自発的にインスリンを放出する人工膵臓用材料へと発展させる。つまり、薄膜材料やカプセルの構造、インスリンと酵素の固定化方法などの最適化を行い、医療用デバイスと組み合わせることでインスリン療法に有用なドラックデリバリーシステムを実現する。 1)インスリン放出ナノカプセルのおよびナノ粒子の作製 前年度に得られた結果をもとに、グルコースに応答してインスリンを放出する微粒子およびナノカプセルの作製を試みた。薄膜およびカプセルの調製には交互累積膜(LBL)法を用いた。この方法は、基板上に相互に結合するポリマーを交互に被覆することで調製し、膜厚や膜透過性および機能性分子の量などを任意に操作することができるためグルコース応答やインスリン放出の最適化を行うことができる。種々の材料や条件においてLBL法により微粒子にインスリン放出膜を被覆する、薄膜被覆後に微粒子を溶解除去する、ことで様々な構造を試みた。微粒子や膜材料、調製条件を検討したところ、グルコースに応答してインスリンを放出する微粒子の作製に成功した。 2)乳酸応答累積膜の開発 上記のシステムを応用し、グルコースオキシダーゼのかわりに乳酸オキシダーゼを利用することで乳酸刺激によって分解する累積膜を開発した。がん細胞周辺は正常細胞に比べ乳酸濃度が高いことが知られており、この累積膜はがんドラックデリバリーシステムへの応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェニルボロン酸およびシキミ酸を20%程度修飾したポリアリルアミンを用いることで微粒子上へのナノ薄膜の被覆に成功した。また、球状高分子であるデンドリマーを用いることで応答性の改善ができた。これらの材料で調製したナノ薄膜にグルコースオキシダーゼを固定することでグルコースに対する速やかな応答性を獲得した。また、この薄膜にインスリンが静電的相互作用により吸着すること、インスリンがグルコースによる膜分解に伴って放出することを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したナノカプセルおよび粒子を組み込んだインスリンドラックデリバリーシステムのためのナノピペットの試作および評価を行う。ナノピペットはガラスおよび石英キャピラリーから作製する。インスリン応答ナノ薄膜を被覆、およびナノカプセル、ナノ微粒子を充填したナノピペットの調製はイオン電流観察、走査電子顕微鏡および蛍光顕微鏡観察により行い、市販の皮膚を模したゲルを購入しグルコース応答性評価を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)交付決定後の予算の減額により予定していた機器の購入をあきらめ、共同研究者の施設に赴き機器を借り一部の測定を行ったため。 (使用計画)引き続き共同研究先で測定を行うため物品費の一部を旅費にあてる。
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