2017 Fiscal Year Research-status Report
フリーラジカル可視化技術を用いた腎・臓器連関機序の解析
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16K08196
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大和 真由実 九州大学, 薬学研究院, 特任准教授 (30380695)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / 尿毒症物質 / 腎症モデル / 認知症 / 生活習慣病 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代は、人口の高齢化、肥満、糖尿病や脂質異常症を有する患者の増加などに伴い、合併症を有する患者が多くなっている。これらの疾患では、障害は単一臓器に限局せず、いずれかの臓器が障害されると、互いの臓器を傷つけあう負の連鎖を形成する。例えば、糖尿病では、腎症や神経症該等の合併症を引き起こす。したがって、多臓器連関を踏まえた疾患の理解が欠かせないと考えられる。 腎障害によって、尿中に排泄される有機物が体内に蓄積すると、生理的に有害な作用つまり尿毒症の症状を呈する。尿毒症物質の一つであるグアニジルコハク酸は、電気生理学的検討や動物実験によりNMDA受容体作動薬となることが報告されている。NMDA受容体は、グルタミン酸受容体の一つで、記憶や学習に重要な機能を持つ一方で、カルシウムの過剰流入やフリーラジカルの生成による神経細胞死に深く関わる。したがって、グアニジルコハク酸のNMDA受容体への作用は、尿毒症による脳障害に深く関与する可能性が考えられる。しかし、未だ疾患状態における詳細なメカニズムは不明である。 そこで、本研究では、多臓器連関に係わる疾患因子としてフリーラジカルと尿毒症物質に着目し、生体内酸化ストレスの解析により、疾患モデルマウスにおける腎機能及び脳機能障害の機序を明かにすることを目的とした。 現在、多くの疾患モデルマウスが研究に用いられているが、それらはヒトで見られるような合併症症状を呈さない。そこで、平成28年度においては、本目的を達成するための疾患モデルマウスの検討を行い、アデニン摂取による腎不全モデルを選択した。その結果を踏まえ、平成29年度は、アデニン摂取による腎不全マウスによる腎障害の検討、及びその脳機能への影響について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アデニン摂取の腎不全モデルマウスにおける脳障害への影響を検討するため、まず、腎障害の発症について検討を行った。アデニン摂取マウスにおいては、腎臓内にアデニンの代謝物であるジヒドロアデニン結晶の蓄積が認められ、周囲には炎症性細胞の浸潤が確認された。また、組織の繊維化も観察された。 放射状水迷路を用いて、本モデルマウスにおける認知機能の評価を行ったところ、短期記憶障害が認められた。また、PC12細胞を用いた評価では、グアニジノコハク酸の添加により細胞死が誘導された。 アデニン摂取腎不全マウスでは、認知機能の低下が起こることが明かとなり、概ね計画通り進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、アデニン摂取モデルマウス及び細胞系を用い、尿毒症物質による脳障害のメカニズムについて検討を重ねるとともに研究の総括を行う。
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Causes of Carryover |
購入予定であった物品の価格に対し、差額が生じたため。
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