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2018 Fiscal Year Research-status Report

天然変性蛋白質に含まれる残存構造とその機能解析

Research Project

Project/Area Number 16K08204
Research InstitutionTeikyo Heisei University

Principal Investigator

西村 千秋  帝京平成大学, 薬学部, 教授 (70218197)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2020-03-31
Keywordsαシヌクレイン / NMR / 天然変性蛋白質 / アミドプロトン交換 / シグナル強度 / 変異体 / 残存構造 / アミロイド
Outline of Annual Research Achievements

αシヌクレインはアミロイドを形成しパーキンソン病を誘発する。アミロイド形成能に変化を与えると報告されたA30PとA53T変異体は家族性パーキンソン病の患者に見られる。本研究では、溶液NMRを使って構造解析し、アミロイドを形成する前段階において、野生株と変異体で構造に違いがあるかを調べた。
CLEANEX-PMにより得られる交換速度定数を異なる温度で求め、その比の値によって蛋白質構造の揺らぎの増加や構造形成の増加を評価した。A30Pの変異によって、Cドメインの一部の揺らぎ構造の増加が導かれた。また一方、変異の部位を含むNドメインの一部では、両変異体において構造化の上昇が観測された。この部分の初期の構造化によって線維の核形成速度が上昇すると考えられた。
さらにシグナル強度が上昇する場合、その部位の揺らぎが上昇したと考え、シグナル強度を解析した。A30PにおいてCドメインの一部で揺らぎ構造が上昇した。シグナル強度を測定し、温度を変えた時のシグナル強度の比を求めた。シグナル強度の比からも、両変異体においてCドメインの広い領域で揺らぎ構造の増加が観測された。さらにA30Pにおいて、Nドメインの一部の領域の安定化と同時に、他の領域の揺らぎ構造の上昇が見られた。
またシグナル強度の変化の値の標準偏差を求めた。その結果A30PのCドメインにおいて、最も大きなシグナル強度のランダム度を観測した。即ちこのCドメインで、最も大きな揺らぎ構造も見られていたことより、シグナル強度の変化がバラバラであれば、分散度が高くなり揺らぎ構造が増加すると考えた。
このようにアミロイドを形成する前段階の溶液構造中でも、野生株と変異体間で構造の差が見られた。さらにNドメインの変異の影響がCドメインにおいても観測されたので、溶液中のαシヌクレインにおいて構造変化または複合体形成などのあることが示された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

天然変性蛋白質の残存構造を観測するには、まず化学シフトとアミドプロトン交換による方法が考えられた。しかしαシヌクレインは天然変性度が高く、残存構造を感知することは難しかった。さらにCドメインには酸性残基が15残基も存在するところがあり、その影響で環境としてpHが低くに保たれ、見かけの交換速度が遅くに見える可能性が、シグナル強度などの別の測定により考えられた。従って現段階では、絶対的な値としては、これをとり扱いにくいという結論に達した。代わりに温度2点以上で交換速度定数を計測する方法がうまくいっていると考えられた。また、Nドメインの部位特異変異の影響がCドメインの構造変化に結びついたことが考えられるので、残存構造が実際実験で観測できている点で、うまくいっていると考えられた。

Strategy for Future Research Activity

1)今後は天然変性蛋白質の折り畳み機構の速度論的な解析と、さらに天然変性蛋白質のNMRによるシグナル帰属法の開発などを行っていく予定である。共同研究を行っているβラクトグロブリンやアポミオグロビンの折り畳み研究も順調に遂行されており(Sakurai et al., 2017)、本研究でも取り入れていく。
2)速度論的な研究を成功させるには、野生株や数種の変異体だけの扱いでは難しいので、効果的な変異体の使用が必要である。
3)アミドプロトンの交換速度と、温度依存性を組み合わせた実験系は有用だと思われる。アミドプロトン交換速度は、pHやサンプル調整条件に敏感に影響を受けるので、温度だけを変えて測定する場合には、正確なその変化の値を求めることができる。さらに温度変化の実験では、範囲内であれば可逆的な系として扱える。今後は温度変化の条件を有効に使って、速度論的な実験系を組み立てていく。
4)アミドプロトンの交換速度の変化ともに、シグナル強度の変化を追跡することも重要であることがわかった。他にも残存構造解析にふさわしい実験系を見出していく。
5)機能であるアミロイド形成能と残存構造の存在の関連を示していく。
6)確かに残存構造は観測されているので、部位特異変異などと組み合わせて残存構造の位置を示していく。緩和に関わる実験やpHジャンプの実験により、残存構造を明らかにしていきたい。

Causes of Carryover

最終年度にあたる2018年度において、物理化学的なデータをコンピュータを用いて解析し、研究結果を集中して総括してきた。今回これにより、蛋白質の折り畳みに関する成果を整理できたので、その成果に基づいてさらに蛋白質構造形成の研究を発展させる。
2019年度は新しいNMR測定のための安定同位体標識された種々の蛋白質の合成にかかる費用、新しい蛋白質の測定法開発のための高磁場NMR装置の使用料、NMR微量サンプル用のチューブ、ピペット、蛋白質濃縮用カートリッジなどの消耗品購入に使用する計画がある。さらに論文投稿料など情報公開発表などに用いられる。

  • Research Products

    (2 results)

All 2018

All Presentation (2 results)

  • [Presentation] NMRによる天然変性アルファーシヌクレイン蛋白質の残存構造解析2018

    • Author(s)
      西村千秋
    • Organizer
      日本生物物理学会第56回年会
  • [Presentation] 構造蛋白質であるHIV-1p17とp24の動的と静的構造のNMR解析2018

    • Author(s)
      西村千秋
    • Organizer
      第57回NMR討論会

URL: 

Published: 2019-12-27  

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