2017 Fiscal Year Research-status Report
早期臨床開発を目指した革新的生体膜透過ブースティング技術の確立
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16K08211
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
武田 真莉子 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (70257096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀井 敬泰 神戸学院大学, 薬学部, 助教 (40637451)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インスリン / バイオ医薬 / 吸収促進 / 細胞膜透過ペプチド / 難吸収性薬物 / トリプトファン / アルギニン / バイオアベイラビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、創薬全体において、新規薬物候補化合物の “難吸収性(低膜透過性)の克服”という大きな難題が立ちはだかっており、その普遍的な解決方法 - すなわち高度に有効なバイオアベイラビリティ(BA)ブースター技術開発が世界中の経口製剤市場に強く求められている。このような背景から、本研究は、難吸収性物質に分類される医薬品候補化合物や既存の薬物(バイオ薬物・Efflux transporter基質である低分子薬)及び薬物担体(ナノ粒子)の経口創薬に有効活用できる生体膜透過デリバリー基盤技術を確立することを目的とする。さらに、本基盤技術は細胞膜透過ペプチド(CPPs)の卓越した膜透過ブースティング作用に基づくものであるが、我々の最新の知見である“アルギニンモノマーによる強い膜透過ブースティング作用”を導入して、本技術の早期臨床開発に着手することを目指している。 前年度に、CPPsの構成アミノ酸であるアルギニンモノマーが、それだけでも十分なインスリン消化管吸収促進効果があることを見出し、経口投与実験によりその効果を実証し、特許を出願した。その検討の過程で、CPPsがその作用を発現する際にアルギニンに加えて、鍵となる構成アミノ酸といわれているトリプトファンについても検討を加えた結果、当初予想していた以上に強い吸収促進効果があることが確認された。トリプトファンにおいては、インスリンのみならず、数種のバイオ医薬の消化管吸収性を飛躍的に高めることが動物実験において新規に見出され、この結果を特許に追加することができた。 さらに、pKaおよび分子量が異なる数種の低分子難吸収性薬物へのCPPsの膜透過促進効果についても検討を開始して、CPPsの作用発現と薬物の物性との間に一定の傾向を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルギニンモノマーによるインスリン経口吸収促進効果をin vivo経口投与実験で実証することができ、また、サプリメントとしてすでにヒトに用いられているトリプトファンについても、様々なバイオ医薬の消化管吸収性を著明に改善するという新規の知見が得られたため、早期臨床試験の実施に向けて大きな一歩を進めたと考えている。また複数の低分子化合物への作用も実証することができ、合わせて特許出願2つができたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討により、細胞膜透過ペプチド(CPPs)の構成アミノ酸であり、ヒトに用いられているアルギニンおよびトリプトファンが卓越したバイオ薬物消化管吸収促進効果を示すことを実証してきた。この成果を踏まえて、小腸吸収促進効果の比較および薬物との分子間相互作用を測定し、本技術の応用性と限界について明らかにする実験を進める。 難吸収性低分子薬に対しては、各種トランスポーター基質の薬物を対象薬とし、CPPsとしてとしてはアルギニン、オリゴアルギニンあるいはペネトラチンを用い、細胞実験と分子間相互作用実験により応用性を評価する。 DDSキャリアに対しては、生理的条件下anion、cationあるいはneutralとなるように表面修飾した蛍光標識ポリスチレンナノ粒子(直径200nm)を用いて難吸収性低分子薬と同様の検討を行い、応用性と限界を明らかにしたいと考えている。 上記で得られた知見を基に、早期臨床試験への実施に進みたい。
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Causes of Carryover |
(理由)4,425円は、必要な試薬を購入するには不足であるため、この残額は次年度に有効活用することとした。 (使用計画)次年度の試薬代金の一部に使用する予定である。
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