2017 Fiscal Year Research-status Report
顕微ラマン分光法を用いた医薬品製剤中の一次粒子イメージング法の開発
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16K08213
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Research Institution | Shujitsu University |
Principal Investigator |
森山 圭 就実大学, 薬学部, 講師 (60345163)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ラマン分光法 / イメージング / 一次粒子 / 原薬 / 製剤 / 溶出 / 粉砕 / 分級 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに手法をほぼ確立させた製剤中の原薬一次粒子のラマンイメージング法について、平成29年度は当初計画の通り、自前で調製した各種粒子径のフェニトイン原薬を用いたモデル製剤を作成し、それらの製剤中のフェニトイン原薬一次粒子イメージングを行った。フェニトイン原薬は再結晶した結晶から粉砕および分級によって得たが、その際の粉砕工程で二つの異なる手法(乳鉢粉砕およびボールミル粉砕)を用いた。分級した原薬について本研究で確立させた原薬一次粒子イメージングを行うと、同じ粒子径に分級される原薬でも、粉砕方法によって一次粒子形状が全く異なることがわかった。乳鉢粉砕では一次粒子の大きさによって分級されていたが、ボールミル粉砕では細かい一次粒子が凝集した凝集塊の大きさによって分級されていた。これらの原薬を用いてモデル製剤を作成し、製剤化後の一次粒子イメージングを行うと、やはり原薬調製段階と同様に、ボールミル粉砕原薬では製剤中に小粒子の凝集体が散在している様子が見られた。その後、各種モデル製剤について、当初は平成30年度の研究計画としていた溶出挙動の調査を行った。その結果、興味深いことに、製剤からの原薬溶出速度は、原薬一次粒子よりも凝集塊の大きさに依存していることがわかった。乳鉢粉砕とボールミル粉砕で、原薬段階で同じ粒子サイズに分級された原薬を用いて作成した製剤では、ほぼ同様の溶出挙動を示した。ボールミル粉砕原薬では小粒子の凝集体のサイズによって分級されているにもかかわらず、その製剤の溶出挙動が乳鉢粉砕の製剤と同等であったことは、原薬の粉砕・分級と溶出挙動との関係性に重要な示唆を与えるものであり、本研究で確立した原薬一次粒子イメージング法なくしては得られなかった結果であると言える。この研究成果については、平成30年度に学術論文(現在執筆中)と各種学会発表において広く発信していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、平成29年度はフェニトイン以外の原薬について本研究の原薬一次粒子イメージングが適用可能かを判断する計画であった。研究実績の概要の欄に記述したように、平成29年度にはフェニトインを用いた実験に関して非常に興味深い知見が次々と得られ始めたため、本来ならば平成30年度に計画していた溶出挙動調査を早々に実行し、フェニトイン製剤における一次粒子イメージングの重要性に関する研究を深く掘り下げることに重心を置いた。その結果、フェニトイン以外の原薬での一次粒子イメージングについては、大きな進展は得られなかったが、メトホルミン塩酸塩およびカルバマゼピンについて同様の一次粒子イメージングが応用可能であることを確認することはできた。このような点から、研究期間内の全体計画を鑑みたとき、現在までの進捗状況はおおむね順調であると判断される。なお、フェニトインおよびメトホルミン塩酸塩については、一次粒子イメージングの基準となる3つの標準ラマンスペクトル、つまり結晶格子のa、b、c軸のそれぞれと励起レーザーの偏光方向とが平行となるときのラマンスペクトルを、X線単結晶構造解析の結果をもとに得ていた。このようにして3つの標準スペクトルを得るのは非常に手間と時間がかかるため、カルバマゼピンを用いた事例においては、ラマンイメージング測定時に得られた多数のスペクトルデータ群から、標準スペクトルとして最も適当と考えられるものを、統計学的手法を駆使して抽出してくる試みを行っている。これについてはまだ完全に手法を確立している状態ではないが、初期検討としては十分良好な成果を収めている状況にある。平成30年度はこの手法の確立についても進めていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
フェニトインを用いた製剤中原薬一次粒子イメージングと溶出挙動との関連性調査については平成29年度までで一定の成果を収められたので、平成30年度はフェニトイン以外の原薬について同様の調査を行い、本研究課題である一次粒子イメージング法が一般的に応用可能であり、かつ製剤設計において重要な知見を与えうるものであることを明確にする。フェニトイン以外の原薬としては、平成29年度に着手したメトホルミン塩酸塩、カルバマゼピンを始めとして、その他可能な限りの原薬について本手法の応用可能性を検討する。平成29年度にカルバマゼピンを対象とした研究で着手した、X線単結晶構造解析を用いない簡便な標準スペクトル抽出法を早急に確立し、この方法を用いることで多くの原薬について一次粒子イメージング法が誰でも簡単に利用可能であることを示す。また、各種原薬の製剤について、先発製剤とジェネリック製剤の一次粒子形状の違いと溶出挙動への影響なども、これまでの研究で確立した一次粒子イメージング法を用いて調査していく予定である。平成30年度は研究期間の最終年度であるので、得られた研究成果については、論文および学会発表で精力的に情報発信を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
平成29年度物品費に関する業者値引きにより差額が発生した。この額に関しては、平成30年度の物品費(消耗品費)に充てる予定。
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