2017 Fiscal Year Research-status Report
革新的人工調製肺サーファクタントの開発と適用拡大への試み
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16K08216
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Research Institution | Daiichi University, College of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
中原 広道 第一薬科大学, 薬学部, 准教授 (00513235)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ナノ機能材料 / ナノ医薬 / 肺サーファクタント / 複合材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
フッ素化両親媒性物質を肺サーファクタント薬に添加し、その薬効の増大を成就する基盤研究の一環として、親水基のない部分フッ素化アルカン(F10H16及びF10H20)、その2量体であるフッ素化アルカン(di(F10H16)及びdi(F10H20))と肺サーファクタント主成分であるジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC) との二成分相互作用及びその界面挙動をLangmuir単分子膜により精査した。298.2 K、超純水下相液の条件下で、これら4種の部分フッ素化アルカンは典型的なordered膜を形成した。F10H16 及びF10H20 の極限面積は、共に同じ数値を示し、炭化フッ素鎖の断面積を反映していた。一方、di(F10H16)及びdi(F10H20)の極限面積は単量体の約2倍の面積を示し、ダイマーにすることで膜の凝集性が向上した。二成分DPPC/部分フッ素化アルカン系の表面圧一面積曲線の測定において、全ての系においてDPPC の一次相転移圧から膜の崩壊圧の間に、組成に依存した屈曲点が現れた。この屈曲点は、部分フッ素化アルカンからなる表面ミセルの形成に起因すると考えられる。またこのミセルは、分子占有面積を考慮に入れるとDPPC 単分子膜上に形成される可能性が高い。さらにこの表面ミセル形成は、蛍光顕微鏡画像, BAM、AFM 等によっても裏付けされた。部分フッ素化アルカンは、体内での消失時間が他のアルコール型及びカルボン酸型の部分フッ素化合物よりも著しく短く、肺サーファクタントへの応用が期待できる。本研究の成果は,広範な呼吸器疾患 (喘息, SARS, COPD等) への適用拡大へと貢献できる可能性を見出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規の部分フッ素化化合物を4種合成でき、基本的な膜物性を評価した。また、肺サーファクタント主成分との相互作用を精査でき、今後の道しるべを得ることができた。これらの理由により研究の進捗状況はおおむね順調だと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
異動2年目で研究環境が大幅に変わったが、できることを確実にやっていくつもりである。具体的には部分フッ素化アルカンとDPPCとのLangmuir単分子膜物性をさらに精査する。その後、学会発表を得て、学術雑誌への投稿・論文化へとつなげる。
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Causes of Carryover |
異動一年目のため、研究室整備等に時間がかかり、予算執行が滞ってしまった。本年度は、プロジェクトの最終年度のため、研究遂行はもとより、研究の成果の公表・発表に経費を割り振るよう計画している。
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Research Products
(20 results)