2016 Fiscal Year Research-status Report
低分子化合物によるスプライス部位選択制御の分子機構解明と疾患原因変異への応用
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16K08225
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
米田 宏 北海道大学, 薬学研究院, 講師 (60431318)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | スプライシング / 低分子化合物 / スプライソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で同定、解析を行ってきた新規のスプライシング調節化合物について本研究ではその作用機序を理解して応用へつなげることを目的としている。スプライシング調節薬は近年転写産物の網羅的解析手法の進歩によりその有用性が理解され期待が高まっているが、その作用の広範さゆえに実用に至ったものはまだない。一方でこれらの化合物が核内で起こる全てのスプライシングイベントに影響を与えるわけではなく、それぞれの化合物の作用に応じてそれぞれ異なるグループの遺伝子群のスプライシングに影響を及ぼすことが明らかとなってきた。そのため、スプライシング調節薬の作用は広範囲に及ぶものの、その作用には一定のルールがあると予想され、そのルールを理解して各化合物の作用の方向性を予測できるようになれば、スプライシングの調節作用を示す化合物を薬として利用する方策につながると考えられる。そのため、我々の化合物についても転写産物の網羅的解析を行い、スプライシングパターンの変動の傾向を解析した。また得られた結果を元にいくつかの化合物応答性のスプライシング変動を示す遺伝子を同定することができ、これをモデルとすることで、これまでのレポーター遺伝子によるスプライシングの基質認識制御能の検討から、内在性遺伝子を用いた活性評価が可能になった。そのため、類縁化合物の活性評価がより簡便に行えるようになり、さらに化合物の作用標的と目されるタンパク質の活性評価法としてもその有用性が期待される状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
我々の新規スプライシング調節化合物で処理した培養細胞のRNA-seq解析により、化合物処理後のスプライシングパターン変動の特徴を掴むことができた。これまではイントロン末端に変異を含むスプライシングのレポーター遺伝子をモデルとして、スプライシングの正確性維持機構の一側面を切り取ったより人工的な実験系で化合物の評価を行い、その活性を詳細に解析してきたが、このような方向性の研究とは全く異なる視点から化合物作用の理解をもたらした点で、今年度研究が大きく展開したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた網羅的なスプライシングパターン変動の解析から得られた化合物に応答する遺伝子群のスプライシングを指標とすることで、様々な展開が考えられる。とくに遺伝子発現をノックダウンすることで同様の変化を示す遺伝子を同定すれば、化合物の作用機序の詳細を明らかにできると予想される。次年度移行はこの化合物の作用標的の同定を大きな目標の一つとして進めていく。作用標的を同定して化合物の作用機序が明らかになれば、異なる母核で同じ標的を叩く化合物を同定するなどの展開も望めるため、スプライシング調節作用の応用を考えた場合に大きな意義があると考えている。
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Causes of Carryover |
化合物処理後の転写産物の網羅的解析の結果が予想以上の進展をもたらしたため、当初予定していたスプライソソーム側の化合物処理後の構成因子の変動を調べる生化学的実験の実施の必要性が低下し、本年度は実施しなかった。そのため次年度使用額が生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
内在性遺伝子のスプライシングで化合物作用の指標となるものが同定できたことで、実験系に定量RT-PCRが大きな割合を占めるようになった。この実験では分子生物学実験用の試薬にかかる消耗品費が予定よりも掛かると予想されるので次年度使用額はその費用に充てていく。
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