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2016 Fiscal Year Research-status Report

細胞極性に応じた局在オートファゴソームの形成と機能解析

Research Project

Project/Area Number 16K08226
Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

矢野 環  東北大学, 薬学研究科, 准教授 (50396446)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2019-03-31
Keywords細胞・組織 / オートファジー / 細胞極性
Outline of Annual Research Achievements

腸管上皮組織は経口摂取された病原体や化学物質による損傷に対する物理的バリアとして重要であり、その恒常性維持の破綻は炎症性疾患の原因となる。これまでに我々は、腸管上皮細胞におけるオートファジー不全がRef(2)Pタンパク質凝集体蓄積を介して組織恒常性の破綻をおこすことを示してきた。本研究では、腸内細菌に対して上皮細胞が産生する活性酸素種に応じて形成されるオートファゴソームが、上皮細胞内の極性に従い形成される分子機構を解明することを目的とする。そのため、腸内細菌叢の操作が容易、かつ腸管上皮細胞の遺伝学的、組織学的検討法が確立されているショウジョウバエをモデル生物として用い、細胞極性に応じて局在する選択的オートファゴソーム形成の分子機構を、活性酸素種刺激の受容、オートファゴソーム形成に必要な因子群の極性輸送の両面から検討する。
平成28年度は、腸管上皮細胞内においてシグナルプラットフォームとして機能するRef(2)P凝集体が、カドへリン様因子Fatの機能抑制とその際に下流でHippo経路を活性化する因子Dachsに依存して形成されること、また、このRef(2)P凝集体と共局在したDachsタンパク質はオートファジーにより量的制御を受けていることを明らかにした。さらに、ROSによるRef(2)P凝集体形成機構の解明のため、腸管上皮細胞特異的にオートファジー不全を遺伝学的に起こしたショウジョウバエ成虫を用い、そのROS感受性を消失させるような遺伝子変異を探索する系の構築を終了し、ゲノム網羅的探索を開始した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

我々はオートファジー異常を遺伝的要因とする炎症性腸疾患クローン病のショウジョウバエモデル系を確立しその分子機構を解析した過程で、腸内常在菌が与える微弱なシグナルによりおきるHippo経路の不活性化とそれによる腸管幹細胞の分裂促進がシグナルScaffoldタンパク質Ref(2)P複合体を介しており、それが正常な上皮細胞ではオートファジーによる量的制御を受けることにより不要な自然免疫応答が抑制されていることを明らかにした。本研究では、腸管上皮細胞に形成されているRef(2)P複合体の局在機構の検討、および、腸内細菌がもたらす刺激により形成するシグナルscaffoldとしてのRef(2)P複合体形成機構の2項目を目的としている。本年度は、シグナルscaffoldとしてのRef(2)P複合体形成における上皮細胞接着とそれを検知するカドへリン様因子Fatの重要性を明らかにした。Fatは上皮組織において細胞間接着の消失により不活化しHippo経路を活性化する。腸管上皮細胞においてFat発現を抑制するとRef(2)Pシグナルプラットフォームが形成されたことから、オートファジー不全によりおきる腸管幹細胞の異常分裂亢進が上皮細胞間の接着を異常にし、それがFatにより感知されることでRef(2)Pを介したHippo経路活性化が起きていると考えられた。したがって、本研究の項目1であるRef(2)P複合体の局在は、Fatの不活化によりリクルートされるDachsタンパク質の局在が規定していることが明らかとなった。本研究の項目2である腸内細菌がもたらす刺激により形成するRef(2)P複合体形成機構については、腸管上皮細胞の産生する活性酸素種によりどのような分子機構を経てこれが形成されるかを明らかにするためのスクリーニングの条件を決定、すでにゲノム網羅的探索を開始し、計画通りに進捗している。

Strategy for Future Research Activity

本研究の項目1については、以下の2点を推進する。1. 腸管組織におけるDachs-Ref(2)P 複合体を包囲するオートファゴソームの可視化 2. 局在したオートファゴソームの形成に必要な細胞極性因子と膜輸送関連因子の決定とその機能解析 これらにより、基底状態や、栄養飢餓時に誘導され形成するオートファゴソームと異なり、極性を有する細胞の特異的な箇所に形成されるオートファゴソームの形成機構の全容を明らかにする。
項目2については、本年度に引き続きゲノム網羅的スクリーニングを推進する。現在は腸管特異的オートファジー不全個体の活性酸素種による個体死を指標としたスクリーニングにおいてH2O2を使用しているが、ミトコンドリア傷害という異なる機構でオートファジー不全個体の個体死をもたらすparaquatを用いた同様のスクリーニングも並行して実施する。これにより、組織傷害の原因となる現象と、その結果として起きる現象に関与する因子をスクリーニングの段階でクラス分けが可能になり、それらの結果を基にした、活性酸素種刺激の受容機構解明の効率化を目指す。また、本年度までに解明した腸管上皮組織特異的オートファジー不全のもたらす腸管恒常性破綻についての知見を速やかに投稿論文として発表する。

Causes of Carryover

研究進捗状況に記したとおり、本研究は、研究1年目である本年度は計画通り順調に進捗している。次年度は本年度の進捗に基づき、本研究計画で最も重要であるゲノム網羅的探索、およびその結果に基づく組織学的検討を遂行する。これを行うことにより初めて、本研究の目的である細胞極性に応じて局在する選択的オートファゴソーム形成の分子機構を、活性酸素種刺激の受容、オートファゴソーム形成に必要な因子群の極性輸送の両面から検討することが可能となる。このために、次年度の使用額が必要である。

Expenditure Plan for Carryover Budget

ショウジョウバエの飼育費用。これは、系統維持に加え、ゲノム網羅的探索のために作製するショウジョウバエの飼育費用を含む。ショウジョウバエ変異体の入手に要する通信費等。組織学的検討に要する試薬、プラスチック機器類、、ショウジョウバエの麻酔剤等のための物品費。成果発表のための旅費である。

  • Research Products

    (8 results)

All 2017 2016

All Journal Article (1 results) Presentation (6 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Invited: 1 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] オートファジーと自然免疫、獲得免疫2016

    • Author(s)
      矢野環
    • Journal Title

      肝胆膵

      Volume: 73 Pages: 163-168

  • [Presentation] 自然免疫におけるRef(2)P/p62依存的選択的オートファジー2017

    • Author(s)
      矢野環
    • Organizer
      第90回日本細菌学会総会
    • Place of Presentation
      仙台
    • Year and Date
      2017-03-18 – 2017-03-21
    • Invited
  • [Presentation] Autophagic maintenance of intestinal homeostatic responses to enteric bacteria in Drosophila2017

    • Author(s)
      Hiroki Nagai, Tamaki Yano, and Shoichiro Kurata
    • Organizer
      The 2017 Japan-NIH joint Symposium
    • Place of Presentation
      仙台
    • Year and Date
      2017-02-15 – 2017-02-17
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] オートファジーによるref(2)P (p62) を介した自然免疫応答の制御2016

    • Author(s)
      矢野環
    • Organizer
      第4回新学術「オートファジー」班会議 第10回オートファジー研究会
    • Place of Presentation
      越後湯沢(新潟県)
    • Year and Date
      2016-11-14 – 2016-11-15
  • [Presentation] オートファジーはRef(2)P凝集体によるHippo経路不活化を抑制し腸管恒常性を維持する2016

    • Author(s)
      長井広樹、倉田祥一朗、矢野環
    • Organizer
      第10回オートファジー研究会若手の会
    • Place of Presentation
      越後湯沢(新潟県)
    • Year and Date
      2016-11-13 – 2016-11-13
  • [Presentation] 腸内常在菌に対する腸管恒常性のオートファジーによる維持機構解明2016

    • Author(s)
      長井広樹、矢野環、倉田祥一朗
    • Organizer
      第89回日本生化学会大会
    • Place of Presentation
      仙台
    • Year and Date
      2016-09-25 – 2016-09-27
  • [Presentation] ショウジョウバエ中腸におけるオートファジーによる腸内常在菌に対する応答制御機構の解明2016

    • Author(s)
      長井広樹、矢野環、倉田祥一朗
    • Organizer
      日本比較免疫学会第28回学術集会
    • Place of Presentation
      東京
    • Year and Date
      2016-08-18 – 2016-08-20
  • [Book] ショウジョウバエと共生細菌の相互作用2016

    • Author(s)
      矢野環、倉田祥一朗
    • Total Pages
      281(85-93)
    • Publisher
      化学同人

URL: 

Published: 2018-01-16  

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