2017 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪細胞分化を制御する新規遺伝子が有する新たな生理機能の解明
Project/Area Number |
16K08242
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
今川 正良 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 教授 (20136823)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脂肪細胞分化 / 上皮間葉転換 / EMT / Smad / がん / 遺伝子発現 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
fad104 (factor for adipocyte differentiation) は、脂肪細胞分化を正に制御する因子として当研究室で単離した新規遺伝子であり、ノックアウトマウスなどを用いたその後の研究により、骨分化や肺形成、がんの浸潤・転移に重要な役割を果たすなど、多彩な生理機能を有することを明らかにしてきた。本研究では、がん細胞の浸潤・転移に重要な現象として知られる上皮間葉転換 (epithelial to mesenchymal transition, EMT)にfad104の果たす役割を検討し、以下の結果を得た。 TGF-β1処理によりEMTを誘導したヒト子宮頸がん由来HeLa細胞、CaSki細胞およびマウス乳腺由来細胞NMuMG細胞においてfad104の発現量が高いことを見出した。またこれらの細胞でfad104遺伝子の発現を抑制するとTGF-β1によるEMT誘導を促進することを明らかにした。次にHeLa細胞でfad104遺伝子を人工的に過剰発現すると、EMT誘導を抑制することを見出した。以上の結果より、fad104遺伝子は、EMTを負に制御することを明らかとしたが、HeLa細胞だけでなく他の子宮頸がん細胞ならびにマウス正常細胞においても観察されたことより、fad104のEMT抑制作用は、生体内で普遍的な作用と考えられた。 この作用機構をHeLa細胞で詳細に検討したところ、fad104はSTAT3のシグナル伝達には関与しなかった。一方、Smad2およびSmad3のリン酸化を抑制し、逆にSmad1/5/8のリン酸化を促進することが明らかになった。以上の結果より、fad104は、TGF-β1誘導性EMTにSmadシグナルを介して抑制的に働く新たな因子と思われた。以上の結果をまとめ、平成29年11月にScientific Reports(査読あり)に公表した。
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