2017 Fiscal Year Research-status Report
細胞増殖因子ポリアミンの体内時計制御における役割解明
Project/Area Number |
16K08244
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Research Institution | Chiba Institute of Science |
Principal Investigator |
照井 祐介 千葉科学大学, 薬学部, 教授 (60433687)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ポリアミン / 概日リズム / 体内時計 / 細胞増殖 / 翻訳 / ポリアミンモジュロン / BMAL1 / Clock |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリアミンは細胞内で主にRNAと結合して存在し、蛋白質合成を促進することにより、細胞増殖因子として働く。ヒトを含む地球上のほとんどの生物には、約24時間周期の概日リズム(体内時計)が存在する。体内時計が乱れると、メタボリックシンドロームやがんなどの様々な疾患の発症に関与することが知られている。体内時計を細胞レベルで調節しているのは、転写因子であるBmal1とClockの複合体であり、この複合体がDNAに結合して他の時計遺伝子(Per、Cryなど)や酵素などの発現を制御している。本研究では、マウス線維芽細胞NIH3T3を用い、正常細胞とポリアミン減少細胞で時計遺伝子の発現量を比較することにより、ポリアミンと時計遺伝子の関連性について検討した。 デキサメタゾン(Dex)を同調試薬とし、細胞を同調させた後、ポリアミンの細胞内濃度を測定した結果、規則性の概日リズムを刻んでいることを見出した。次に、NIH3T3細胞をα-difluoromethylornithine(DFMO)の有無で培養し、Dexにより同調させた細胞を回収し、時計遺伝子7種の発現量を比較した。その結果、時計遺伝子Bmal1がポリアミンにより翻訳レベルでおよそ3倍発現促進されることを見出した。また、ポリアミンによるBmal1の蛋白質合成促進機構を解明するため、Bmal1 mRNAの構造を調べたところ、5’-非翻訳領域(5’-UTR)に2つの安定なヘアピン構造が存在した。ポリアミンはこれらのヘアピン構造に作用し、蛋白質合成を促進することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリアミンによるBmal1の蛋白質合成促進機構を解明するため、Bmal1 mRNAの構造を調べたところ、5’-非翻訳領域(5’-UTR)に2つの安定なヘアピン構造が存在した。これらの構造がポリアミンのBmal1合成促進に寄与するか確かめるため、ヘアピン構造を欠損させEGFPにつなげた変異体(ΔHairpin 1及びΔHairpin 2)を作製し、ポリアミンによるEGFPの合成促進効果を比較した。その結果、Wild typeではEGFPの発現がポリアミンにより3倍促進されたが、変異体ΔHairpin 1及びΔHairpin 2においてはポリアミンによる蛋白質合成促進効果が消失し、また、DFMO存在下におけるEGFP蛋白質発現が約3~6倍増加した。以上の結果から、ポリアミンはこれらのヘアピン構造に作用し、蛋白質合成を促進することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
NIH3T3細胞を用い、正常細胞とポリアミン欠乏細胞で細胞周期制御因子の発現量の差をWestern blotting及びNorthern blottingを用いて比較した。その結果、p16蛋白質が、ポリアミンにより翻訳レベルで2倍と強く発現促進をうけることを明らかにした。また、この遺伝子のmRNA構造の検討を行ったところ、p16 mRNAもeEF1AのmRNAと同様、CR配列と開始コドンとの距離が離れている翻訳効率が悪いmRNAであった。BMAL1蛋白質と同様の方法を用いて、ポリアミン合成促進機構とポリアミンが生体時計ネットワークに果たす役割を解析する。
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Research Products
(15 results)