2018 Fiscal Year Research-status Report
宿主細胞トランスフォーメーションにおけるウイルス・マイクロRNAの役割の解明
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16K08250
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
土方 貴雄 武蔵野大学, 薬学部, 教授 (70189786)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ウイルス / マイクロRNA / トランスフォーメーション / miR-138-5p / miR-152-3p |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、SV40のマイクロRNAであるmiR-S1の感染細胞の形質転換における役割について解析した。本研究の作業仮説として「miR-S1は感染細胞内のmicroRNAに結合することで、細胞内microRNAの役割を阻害しその結果細胞が本来とは異なる形質に転換される」を考え、まずmiR-S1が細胞内のどんなmicroRNAに実際に結合するかを検討した。ヒト線維芽細胞にビオチン化miR-S1を導入しアビジンビーズで回収した結果、線維芽細胞で発現しているmiR-138-5pとmiR-152-3pに結合することが明らかになった。次に、miR-138-5pの標的遺伝子をデータベースをもとに検索した結果、SIRT1、E2F1-3、EZH2、CCNE1、p73、TERT、FAKなどの遺伝子が明らかになった。これらの遺伝子が実際miR-138-5pの標的になるのかを、miR-138-5p発現ベクターとコントロールベクターを導入したHEK293あるいはHela細胞間で上記標的遺伝子の発現をqPCRで検討したところ、いずれの遺伝子においてもmRNAレベルでは発現抑制がみられず標的遺伝子の確認はできなかった。そこで戦略を替えヒト線維芽細胞にmiR-S1発現遺伝子を感染導入し安定発現細胞株を樹立し、miR-S1発現細胞株におけるmiR-138-5pあるいはmiR-152-3p標的遺伝子の変動をみた。その結果、調べた遺伝子の中ではmiR-152-3p標的遺伝子であるP21の発現がコントロールに比べ有意に多くなり、作業仮説に矛盾しない遺伝子として確認された。次に、形質転換した細胞でも作業仮説に矛盾しない遺伝子がみられ細胞形質に反映するかを調べるため、野生型SV40あるいはmiR-S1を発現しない変異型SV40によりマウス胎児線維芽細胞を形質転換し漸くそれぞれの細胞株を樹立することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ヒト線維芽細胞にmiR-S1発現遺伝子ならびにコントロールをインフェクションし細胞株を樹立しmiR-S1発現の有無を確認したが、継代を重ねることでmiR-S1の発現がみられなくなり実験に使えなくなってしまったことが第一の理由である。 また、SV40ウイルスによるマウス胎児線維芽細胞の野生型SV40により形質転換した細胞株の樹立に時間がかかり、樹立はできたもののそれぞれの細胞が継代によりT抗原やmiR-S1の発現が消失しないかについて現在まだその確かめ段階であり今後の実験に使えるかを検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
野生型SV40により形質転換したマウス胎児線維芽細胞でのmiR-S1の機能的な発現を確認することが第一である。それが確認できた後に、miR-S1発現のないSV40により形質転換したマウス胎児線維芽細胞との比較を、細胞増殖、テロメア活性、薬剤耐性などの点で行う。さらに両細胞間で、miR-S1の阻害対象の想定しているマイクロRNAであるmiR-138-5pやmiR-152-3pの発現や、これらマイクロRNAの標的遺伝子の変動につい両細胞株間で比較解析する予定である。
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Causes of Carryover |
SV40による形質転換細胞株の樹立に時間がかなり要したため、形質転換細胞株を用いて比較検討を行う実験費用が次年度使用額として生じた。
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