2017 Fiscal Year Research-status Report
チロシンリン酸化シグナルによる染色体分配制御機構の解明
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16K08253
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
中山 祐治 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (10280918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 洋平 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (90411032)
久家 貴寿 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (20551857) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞分裂 / チロシンリン酸化 / 染色体分配 / Src |
Outline of Annual Research Achievements |
当初予定していた細胞周期同調方法に加え,別の同調法においてもリン酸化プロテオミクス解析用のサンプルを調製した。すなわち,Eg5阻害剤STLCで細胞分裂期に同調した後,更にCdk1阻害剤RO-3306を添加して擬似的な細胞質分裂を誘導した。ライセート調製前に可溶性画分を除去したサンプルも用意し,プロテオミクス解析の結果を比較した。これらの実験において共通して検出されたリン酸化ペプチドから,細胞分裂後期においてリン酸化されるタンパク質を推定した。細胞分裂後期・終期においてチロシンリン酸化されるのか,内在性タンパク質の免疫沈降により解析したが,非特異的な結合などにより明確な結果を導くに至らなかった。そこで,遺伝子を入手し誘導発現プラスミドを構築した。ドキシサイクリンによる誘導発現可能な細胞株を樹立した。発現したタンパク質は,内在性タンパク質と同じ細胞内局在を示した。 これまで,阻害剤ライブラリーを用いたスクリーニングにより,幾つかの受容体型チロシンキナーゼ阻害剤が細胞分裂阻害効果を持つことを明らかにしてきた。そこで,これらの阻害剤の特異性を調べるため,異なる阻害剤を用いて細胞分裂に対する効果を検討した。その結果,標的が同じ異なる阻害剤において,同様な効果が観察された。さらに,siRNAによりノックダウンしたところ,2つの受容体型チロシンキナーゼのノックダウンにおいて,細胞分裂の阻害効果が観察された。よって,これらの阻害剤の標的分子が細胞分裂制御に関与することが示唆された。 また,我々が樹立したv-Src誘導発現が可能な細胞株を用い,リン酸化シグナルの亢進が染色体分配にあたえる影響を解析した。その結果,v-Src発現により,染色体分配を行わずに細胞分裂を終了する現象が観察され,チロシンリン酸化シグナルの破綻が染色体分配異常を引き起こすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロテオミクス解析,および阻害剤スクリーニングにより,チロシンリン酸化シグナルの関与により細胞分裂制御に関わるタンパク質の候補分子を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果をもとに,チロシンリン酸化シグナルによる正常な染色体分配制御に加え,チロシンリン酸化シグナルの破綻による染色体分配異常について解析する。 プロテオミクス解析により見出したタンパク質が,細胞分裂後期・終期においてチロシンリン酸化されるのかを免疫沈降により確認する。リン酸化されるのであればフェニルアラニンへの変異を導入して細胞に発現させ,細胞分裂進行への影響を調べる。内在性のタンパク質の存在により変異の影響が現れにくい場合には,非翻訳領域をターゲットにしたsiRNAにより内在性タンパク質をノックダウンして,変異の影響を調べる。これらの検討の結果,このタンパク質のリン酸化の生理的意義を明らかにする。 また,阻害剤ライブラリーのスクリーニングにより見出した,細胞分裂制御の可能性を持つ受容体型チロシンキナーゼについては,変異導入によりキナーゼ不活性型変異体を作成し,キナーゼ活性の必要性について調べる。 さらに,v-Src発現細胞において観察された染色体分配異常のメカニズムを明らかにするため,v-Srcの基質を探索する。プロテオミクス解析により基質を見出したら,v-Srcにより直接リン酸化されるのかin vitro kinase アッセイにより調べる。
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Causes of Carryover |
(理由)リン酸化プロテオミクスを複数回行う予定であったが,少ない解析回数において期待される結果が得られた。また,抗体などの試薬について,既に保有しているものを利用することができたため,使用予定額を下回った。
(計画)各種抗体,リン酸化特異抗体,プラスミドDNA,候補タンパク質のcDNA,DNA配列解析などに使用予定。リン酸化特異抗体の作成を依頼する場合は高額となる可能性がある。
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Research Products
(13 results)