2016 Fiscal Year Research-status Report
ドラッグリポジショニングによる新規アルツハイマー病治療薬の開発
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16K08254
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
浦野 泰臣 同志社大学, 生命医科学部, 助教 (00546674)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 脂質代謝 / 24S-hydroxycholesterol / ACAT / 細胞死 / ドラッグリポジショニング |
Outline of Annual Research Achievements |
K-604以上の強い細胞死抑制能を示した候補化合物3つについて、ヒト野生型APPを定常的に発現するCHO細胞株を用いてAmyloidβ(Aβ)産生に対する効果を確認した。その結果、K-604よりも短時間で有意にAβ産生を抑制する化合物YおよびZが選出された。その作用点としてガンマセクレターゼの基質であるC99が増加していたことからガンマ切断を抑制した結果と考えられた。 また脳移行性類縁体のスクリーニングとして、Y、Zを含む類縁体6化合物についてPharmacocell社の血液脳関門再構成キットを用いて評価した。ポジコンとして用いたカルバマゼピンは顕著な透過が認められたのに対し、類縁体は脂溶性が高く難溶性のため結晶が析出し易く評価困難であった。BSA添加により化合物の溶解性を上げた場合においても、脳側への透過率は極めて低く、血液脳関門の透過性は期待できない結果となった。一方、透過性がないことが予想されていたK-604は10%程度の透過性が確認された。 脳特異的酸化ステロールである24S-hydroxycholesterol(24S-OHC)誘導性神経細胞死の誘導機構について、細胞に蓄積する24S-OHCのエステル体に着目して解析を行った。ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞に24S-OHCを6時間処理した細胞から脂質を抽出し、HPLC法を用いて解析したところ、24S-OHCエステル体と考えられる4本のピークが観察された。これらのピークについてエステル結合すると予想された各種脂肪酸を添加してピークの増加を観察したところ、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、DHAの4種の長鎖不飽和脂肪酸を添加した場合、各ピークの特異的な増加が観察された。さらにDART-MS法を用いて質量分析を行ったところ、上記4種の脂肪酸がエステル結合した24S-OHCエステル体が同定された。またこれら脂肪酸添加は24S-OHC誘導性細胞死を亢進することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的Iについて、K-604よりも24S-OHC誘導性細胞死抑制能が高く、Aβ産生も抑制出来る化合物を2種類同定することができた。血液脳関門再構成キットを用いた評価法を確立し、K-604及びその類縁体の透過性を評価したところ、類縁体は難溶性のため脳側での検出が出来なかったが、K-604自身に脳側への透過性があることが示された。 目的IIについては、24S-OHC誘導性細胞死のメカニズムとして、長鎖不飽和脂肪酸がエステル結合した24S-OHCエステル体が増加することが細胞死シグナルの活性化に重要であることを明らかにした。ACAT阻害剤はこれらエステル体の増加を抑えることで細胞死を抑制すると考えられた。またコレステロールエステルと異なり、親水性部位と疎水性部位の両方を持つ24S-OHCエステル体が増加することが、異常な脂肪滴様構造の形成と小胞体構造の肥大化に大きな影響を与えることが示唆された。これらの内容をまとめた論文をJournal of Lipid Researchに報告した。以上のことから、交付申請書に記した目的における平成28年度の計画は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
目的Iについて、今回検討した類縁体においては血液脳関門を通過可能な化合物が見つからなかった一方でK-604自身に透過性があることが予想されたことから、K-604を用いた経鼻投与法による脳へのDDSを検討する。また脂溶性の高さが問題であったことから、Aβ産生抑制効果が認められた類縁体Zと似た構造をもち、水溶性の性質をもつ化合物を選出し、Aβ産生に対する効果を検討する。 目的IIについて、個々の24S-OHCエステル体に細胞毒性があるわけではなく、総量としての24S-OHCエステル体の蓄積が細胞死誘導に重要であることが示されたことから、脂肪滴様構造の形成に伴う小胞体の肥大化という現象に着目して解析を行う。コレステロールエステル含有脂肪滴の場合、脂肪滴は小胞体から形成され球状の形となるが、24S-OHCのエステル化ではこの過程に異常が起き、小胞体にストレスを与え細胞死の誘導につながるとの仮説を考え、小胞体ストレス応答の有無について解析を行う。
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Causes of Carryover |
繰り越し不可の学内研究予算を先に利用したため、次年度持ち越し分が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究費の使用計画として、今年度に引き続き次年度においても培養細胞株を用いた実験を行うため、当初の計画通り細胞培養用試薬の購入を計画している。またsiRNAや阻害剤等など生化学、分子生物学実験試薬についても購入する。特に抗体の購入費の割合が大きくなることが計画される。加えて産生されたAβの定量に必要なELISA用試薬の購入も予定している。
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Research Products
(4 results)