2016 Fiscal Year Research-status Report
抗うつ薬の新規治療標的分子としての脳マトリックスメタロプロテアーゼの機能解析
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16K08270
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中島 一恵 (久岡一恵) 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 助教 (20393431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森岡 徳光 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 教授 (20346505)
仲田 義啓 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 名誉教授 (40133152)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 抗うつ薬 / アストロサイト / うつ病 / マトリックスメタロプロテアーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
現在臨床で使用されている抗うつ薬の治療効果には、脳内の神経栄養因子が一部関与している可能性が考えられている。申請者らのこれまでの研究から、抗うつ薬による神経栄養因子の増加にはマトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase: MMP)が重要な役割を果たしていることを明らかとしている。そこで本研究では、抗うつ薬の新たな治療標的分子として脳のMMPに着目し、抗うつ薬によるMMP活性化メカニズム、うつ病とMMP機能の関連性、そして抗うつ薬の治療効果におけるMMPの役割を解明し、MMPの新規治療標的分子としての可能性を明らかにすることを目的として行った。本年度は以下の成果を得た。 1、アストログリア細胞(ラット大脳皮質初代培養アストロサイト、ラットアストログリア由来C6細胞)において、三環系抗うつ薬アミトリプチリン処置によるMMP9の活性増加をザイモグラフィー法により検出した。 2、複数の種類の抗うつ薬(クロミプラミン、デシプラミン、ミアンセリン、フルオキセチン、フルボキサミン、デュロキセチン)の処置により、アストログリア細胞においてMMP9の活性増加を確認した。一方で、抗うつ作用を持たない中枢神経作用薬(ハロペリドール、ジアゼパム)やモノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン)の処置ではMMP9の活性は変化しなかった。 3、アミトリプチリンによるグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)の産生増加作用はMMP9阻害薬とMMP3阻害薬で抑制されたが、MMP2阻害薬では抑制されなかった。 4、リコンビナントMMP9とリコンビナントMMP3処置により、アストログリア細胞におけるGDNFの産生が増加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アストログリア細胞における抗うつ薬によるMMP9活性化作用とGDNF産生に関する研究成果については、査読付学術誌に受理された。薬理学的手法によるGi/oタンパク活性化によるGDNF産生機構におけるMMPの関与についての研究成果は、論文にまとめて査読付学術誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究結果から、アストログリア細胞において、抗うつ薬によるMMP9の活性化が神経栄養因子GDNFの産生に重要な役割を果たす可能性が示唆された。来年度は抗うつ薬によるMMP9活性化機構について、選択的阻害薬やsiRNAを用いて検討する。また、動物実験については、行動薬理学的解析に用いる手法(強制水泳テスト、ショ糖嗜好性テスト、社会的相互作用テスト、新奇環境下食餌行動抑制テスト)を確立し、神経障害性疼痛うつモデルマウスを作製した。今後はうつモデルマウスにおけるMMP9機能を解析する。
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Causes of Carryover |
初代培養アストロサイトの実験結果に関する論文の査読過程で追加実験の必要性が生じたため、細胞系の実験を優先させたことから、動物モデルに関する検討を一部次年度に実施することにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初代培養アストロサイトを作製するための動物(ラット)、アストログリア細胞培養用の試薬、うつモデル動物を作製するためのマウス、阻害薬、siRNAなどの物品に研究費全体の9割以上を使用する予定である。
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