2017 Fiscal Year Research-status Report
低酸素誘導因子阻害剤のアディポネクチン高発現ベージュ細胞誘導を介した抗糖尿病作用
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16K08272
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
木平 孝高 福山大学, 薬学部, 講師 (90377276)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 低酸素誘導因子 / 肥満 / 糖尿病 / ベージュ脂肪細胞 / 脂肪細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、低酸素誘導因子(HIF-1a)の脂肪細胞における役割、特にエネルギー代謝との関連について解析を行っている。現段階で、HIF-1a阻害剤である5-[1-(phenylmethyl)-1H-indazol-3-yl]-2-furanmethanol (YC-1)の存在下で脂肪細胞への分化を誘導すると、脱共役タンパク質(UCP-1)が発現誘導されることが明らかとなっている。そこで、3T3-L1の脂肪への分化過程に変化があると考え、HIF-1aの脂肪分化に与える影響を解析したところ、これまでの結果より、3T3-L1細胞にYC-1を添加して脂肪細胞への分化誘導を促すと、脂肪分化に関与するとされるLipin1の発現が上昇することが明らかとなった。また、PPARganmmaの発現もYC-1添加により上昇することが明らかとなった。逆に、HIF-1aの活性化剤を添加すると、分化誘導は抑制された。これらの結果から、HIF-1aは、脂肪の分化の調節を行っていることが考えられる。また、分化後においては、HIF-1aの活性化は、Lipin1の発現を上昇させ、HIF-1aの阻害により、Lipin1の発現が減少することが明らかとなった。Lipin1は、脂質代謝の制御にも関わることが知られているため、HIF-1aはLipin1の発現を介して、脂肪の分化過程と分化終了後とで、異なる働きを担っていることが考えられる。パイロット実験の段階ではあるが、HIF-1aヘテロノックアウト(hKO)マウスに高脂肪食を15週間給餌した後、経口糖負荷試験、インスリン負荷試験を行ったところ、野生型マウスとhKOマウスで大きな違いが観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、低酸素誘導因子(HIF-1a)の脂肪細胞における役割について解析を行っている。脂肪細胞特異的にHIF-1aをノックアウトしたマウスは、肥満はするものの良好な耐糖能を示すこと、培養脂肪細胞(3T3-L1)において、HIF-1a阻害剤である5-[1-(phenylmethyl)-1H-indazol-3-yl]-2-furanmethanol (YC-1)の存在下で脂肪細胞への分化を誘導すると、脱共役タンパク質(UCP-1)が発現誘導されることから、HIF-1aが脂肪細胞の機能、特にエネルギー代謝や熱産生に影響を及ぼすと考えられる。これまでの結果より、3T3-L1細胞にYC-1を添加して脂肪細胞への分化誘導を促すと、アシルグリセロール代謝に関与する酵素であり脂肪分化に関与するとされるLipin1の発現が上昇することが明らかとなった。また、脂肪に分化した後に、3T3-L1にYC-1を添加すると、Lipin1の発現が低下することが明らかとなった。これらの結果から、HIF-1aは、分化誘導時には分化の調節を行っており、分化後においては、脂質代謝の制御に関わるといったように、その役割が分化状況により変化することが考えられる。HIF-1aヘテロノックアウト(hKO)マウスに高脂肪食を15週間給餌した後、経口糖負荷試験、インスリン負荷試験を行ったところ、野生型マウスとhKOマウスで大きな違いが観察されなかった。しかしながら、マウスの組織を採取し、様々なタンパク質の発現について解析を行ったところ、骨格筋において乳酸脱水素酵素 A (LDHA)の発現がhKOマウスにおいて上昇していることが明らかとなった。以上のように、培養脂肪細胞を用いた解析からは多くの結果が得られているが、HIF-1a欠損マウスを用いた解析が遅れているため、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
低酸素誘導因子(HIF-1a)が肥満、糖尿病の病態形成にどのような役割を担っているのかについて解析を行っている。特に、HIF-1aの阻害剤を培養脂肪細胞の分化誘導時に添加すると脱共役タンパク質の発現が上昇したことから、脂肪細胞のベージュ細胞化に重点をおいて解析を行っている。現在、HIF-1aヘテロノックアウト(hKO)マウスに高脂肪食を負荷し、肥満を誘発することにより、HIF-1aが全身の糖代謝にどのような影響を及ぼすかについて解析を行っているが、現時点で、糖負荷試験、インスリン負荷試験どちらにおいても、野生型マウスとhKOマウスとの間で大きな差は観察されていない。しかし、実験に用いた動物数が少ないため、今後も継続して解析を進めていく。また、野生型及びhKOマウスから代謝に関与する臓器(肝、腎、骨格筋、脂肪等)を単離し、ウエスタンブロット法やリアルタイムPCR法により代謝に関連する因子の発現解析を行い、特に脂肪細胞のエネルギー代謝についての解析を進めていく。HIF-1aを脂肪細胞特異的に欠損したマウスにおいて、褐色脂肪細胞におけるHIF-1aの発現も低下しており、HIF-1aの標的遺伝子であるグルコーストランスポーターの発現も低下していた。このことから、褐色脂肪細胞においてもHIF-1aが機能に影響を与えていることが考えられる。したがって、hKOマウスを低温環境で飼育し、褐色脂肪細胞を活性化した際に、hKOマウスでどのような影響が現れるかについても観察を行っていくことを考えている。
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[Journal Article] Iron suppresses erythropoietin expression via oxidative stress-dependent hypoxia-inducible factor-2 alpha inactivation.2017
Author(s)
Oshima K, Ikeda Y, Horinouchi Y, Watanabe H, Hamano H, Kihira Y, Kishi S, Izawa-Ishizawa Y, Miyamoto L, Hirayama T, Nagasawa H, Ishizawa K, Tsuchiya K, Tamaki T.
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Journal Title
Lab Invest.
Volume: 97
Pages: 555-566
DOI
Peer Reviewed
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