2018 Fiscal Year Research-status Report
女性の排尿機能障害、特に腹圧性尿失禁に対する新規治療標的の創出に関する基礎研究
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16K08275
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Research Institution | Daiichi University, College of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
副田 二三夫 第一薬科大学, 薬学部, 准教授 (10336216)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 排尿機能障害 / 腹圧性尿失禁 / エンリッチ環境 / VCD / 閉経 / クレンブテロール / 膀胱平滑筋 / クロペラスチン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度までの研究において、4-vinylcyclohexene diepoxide (VCD) 投与による閉経モデルマウスは、腹圧性尿失禁様の症状を示すことが示唆された。そこで平成30年度は、まず腹圧性尿失禁の既存薬であるクレンブテロールを用いて、閉経周辺期を反映するVCDマウスの排尿活動に対する薬物感受性を検討した。その結果、1.クレンブテロールの慢性経口投与(100μg/kg/day、1日1回14日間)は、VCDマウスの排尿活動に感受性を示し、対照群に比べ排尿量を増加させた。 次に、VCDマウスの膀胱機能を評価するために閉経周辺期のVCDマウスの膀胱平滑筋を摘出し、マグヌス法を用いて等尺性収縮実験を行った。その結果、2.低周波数の電気刺激による平滑筋収縮は、対照群に比べVCD群で増強する傾向を示した。しかし、3.カルバコールによる平滑筋収縮は、両群間で変化を認めなかった。 さらに、排尿機能改善因子である非麻薬性鎮咳薬クロペラスチンとエンリッチ環境の作用を検討した。その結果、4.クロペラスチンの慢性経口投与(20mg/kg/day、1日1回14日間)は、正常マウスの膀胱内圧を低下させ、上述したクレンブテロールと同様の結果が得られた。5.クロペラスチンの同様の投与は、閉経周辺期のVCDマウスの排尿活動に感受性を示さないことがわかった。6.エンリッチ環境飼育群は、対照群であるスタンダード環境飼育群に比べ、閉経周辺期および閉経後のVCDマウスの排尿回数を有意に減少させ、その作用は、マウスの安静期である明期に選択的であることがわかった。 以上の結果から、VCDマウスは腹圧性尿失禁のモデルになり得る可能性がより強く示唆され、このモデルは膀胱機能に対して何らかの影響を及ぼす可能性が考えられた。さらにVCDマウスの排尿機能障害に対して、エンリッチ環境は改善作用を示すことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度の熊本地震の影響で、平成30年度は、当初平成29年度に計画していた研究も実施せざるを得なかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
排尿機能改善因子であるエンリッチ環境は、VCDマウスの排尿機能障害を改善させたため、今後はエンリッチ環境による改善作用に関与する分子を同定する。具体的には、排尿反射に関与する脳部位と膀胱をダイセクションし、PCRアレイを用いて神経活動に関与する受容体や神経栄養因子などについて、網羅的に遺伝子発現定量解析を行い、スタンダード環境飼育群に比べ、エンリッチ環境飼育群で2倍以上の変動を認める分子をスクリーニングする。次に定量的RT-PCRにより、mRNAレベルで排尿機能障害の改善に確実に関与する分子を同定する。 クロペラスチンは、閉経周辺期のVCDマウスの排尿活動に感受性を示さなかったため、今後は、閉経後のVCDマウスの排尿活動に対するクロペラスチンの感受性の有無を検討し、感受性を示した場合は、エンリッチ環境と同様の戦略で、分子の同定を行う予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)現在までの進捗状況でも記載したように、平成28年度の熊本地震の影響で、当初の平成30年度の研究計画より、進捗がやや遅れているため。 (使用計画)研究で使用する試薬や動物、器具などの物品費として使用する予定である。
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