2016 Fiscal Year Research-status Report
難治性消化管疾患の病態制御における温度感受性TRPV4チャネルの役割
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16K08287
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
松本 健次郎 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (10406770)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 温度感受性受容体 / 炎症性腸疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景・目的】温度感受性受容体TRPV4は、物理的刺激やアラキドン酸の代謝物などにより活性化する非選択性陽イオンチャネルである。初年度はデキストラン硫酸(DSS)誘起炎症性腸疾患(IBD)、アゾキシメタン(AOM)、DSS誘起炎症関連大腸がんモデルにおけるTRPV4の局在変化と病態への関与について検討を行った。 【方法】実験動物は8週齢のTRPV4欠損マウス(TRPV4KO)と野生型(WT)雄性マウスを使用した。大腸炎は2%DSSをマウスに7日間自由飲水させることで作成した。大腸がんはAOM腹腔内投与後、2%DSSを自由飲水させることで作成した。免疫染色、ウェスタンブロッテイング、Evans blueによる透過性の評価を行った。 【結果】DSS誘発大腸炎モデルにおいて、TRPV4KOマウスではWTと比べ病態の進行が抑制されていた。正常動物で、TRPV4は上皮細胞に局在が確認されたが、DSS処置に伴い、粘膜、粘膜下の血内皮細胞に顕著に発現増加した。DSSモデルにおける血管透過性の亢進はTRPV4作用薬の静脈内投与によって増加し、拮抗薬の前投与により抑制された。マウス大動脈由来内皮細胞株においてTNF-αとTRPV4作用薬の投与によって血管透過性に関与するVE-cadherinが減少することが明らかとなった。AOM, DSS誘起大腸がんモデルにおいて、TRPV4KOマウスではWTと比べ大腸がんの個数が有意に抑制されていた。AOM, DSSモデルにおいて、TRPV4はCD105やVEGF受容体と血管内皮細胞で共局在することが観察された。 【結論】血管内皮に発現増大したTRPV4が大腸炎と大腸炎関連がんの進行に関わっていることが推察された。 本研究成果を米国消化器病学会、日本薬理学会年会、日本薬学会年会において発表を行った。現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は①(1) IBDモデル動物の作製と病態評価と(2) TRPV4の活性化と血管透過性亢進メカニズムの解明を目的としており、研究の遂行により目的を達成することができた。さらに学会発表を行うことで研究成果を社会へ発信した。 一方で②抗がん剤誘起小腸、味覚障害モデルにおける病態へのTRPV4の関与においてはモデルの確立は完了したが、TRPV4の作用を明らかにするまでは至っていない。しかし生理的味覚受容におけるTRPV4について研究を展開しており興味深い知見を得ることができた。 したがって、現在までの進捗状況をおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の予定どおり③IBD関連がんにおける血管内皮TRPV4の役割を明らかにする。具体的にはTRPV4のがん制御メカニズムを血管新生を標的としてメカニズム解析をin vivo, in vitroの実験により行っていく。またTRPV4を標的とし④術後イレウス、⑤過敏性腸症候群の病態におけるTRPV4の関与を検討する予定である。全て病態モデルは確立しており、TRPV4KOマウスを用いた評価を行っていく、病態モデルにおいて効果が得られない場合は③の検討を中心に展開していく。また初年度に見いだされた、TRPV4と味受容に関する研究を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
初年度は実験が比較的順調に進行した点と、作用薬拮抗薬の活性が高く購入数が少なく済んだ、また透過性の亢進実験で購入を検討していたMillicell ERS-2,トランズウェルの購入が少なく、in vivoの実験で血管透過性の評価を行ったため、初年度の経費を2年目に使用し使用額の変更が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は実験動だけでなく、多種の抗体の購入を計画している。特に味覚の実験に関する抗体は不足している。またがん制御におけるTRPV4の関与を検討するため、血管内皮細胞、マクロファージ細胞を用いた生化学的な実験も計画している。
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Research Products
(6 results)