2018 Fiscal Year Research-status Report
Risk factors for licorice-induced pseudoaldosteroism in practical use of Kampo-medicines
Project/Area Number |
16K08293
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
本間 真人 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90199589)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 甘草含有漢方製剤 / 偽アルドステロン症 / 低K血症 / 抑肝散 / リスク因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
甘草を含有する漢方製剤には低カリウム(K)血症、高血圧、ミオパチーなどを主症状とする偽アルドステロン(偽ア)症が知られている。本症は、重篤化すると横紋筋融解症や心不全に至る副作用であり、特に甘草含量が 2.5 g/日以上を含有する漢方製剤で注意が必要とされていた。近年、甘草含量が2.5 g/日未満の抑肝散(YK)や補中益気湯において低K血症の発現報告が多く、これらの漢方製剤では、甘草含量とは独立した要因(使用方法や投与患者)が偽ア症の発現リスクになっている可能性が考えられる。 本研究では、認知症の周辺症状(BPSD)に対して、急速に使用頻度が高まっているYK製剤(YKと抑肝散加陳皮半夏:YLCH)を対象に、偽ア症の発現リスク因子について検討した。YK製剤投与患者389名(男/女:174/215、年齢:68.6±16.1歳)のうち、94名(24.2%)が投与後34日(1-1600日)に低K血症(K<3.6 mEq/L)を発症した(発症群)。発症群ではYK(YKCHではない)の投与、YK製剤を減量せずに7.5g/日で投与した患者の割合も高かった。発症群の36名(38.3%)では低K血症誘発薬(LPIDs)を併用しており、非発症群(17.3%)と比較して高い割合であった(p<0.05)。Cox比例ハザード解析により、YK製剤投与による低K血症のリスク因子として、YKの投与(YKCHではない)(HR 3.09)、LPIDsの併用(2.74)、低Alb血症(2.15)、減量せずに7.5g /日投与すること(1.60)、一方、投与開始時の血清K値>4.1mEq/Lはリスクを低下させる因子であることがわかった(0.45)。横紋筋融解症に至った症例は、リスク因子を複数有していた。 これらのリスク因子に基づいて投与方法を患者ごとに個別化できれば、漢方製剤の適正使用につながると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
偽アルドステロン症の発現を予測する指標成分として、当初、直接の原因物質であるグリチルレチン酸(グリチルリチンのアグリコンであり、腸内細菌での代謝によって生成する代謝物:GA)の血中濃度を測定する予定であった。しかしながら、GAの血中濃度測定法の開発が思ったように進行せず、測定装置(LC-MS/MS)の故障などの影響もあり、未だに完成に至っていない。GAの簡易測定法としてイムノアッセイの開発も試みて来たが臨床応用するには至っていない。 また、測定検体(患者血清)の収集も当初計画より少ない現状である。今回の研究で明らかになったリスク因子との兼ね合いから、抑肝散の投与患者(主として認知症患者)を対象に血液試料を収集していたが、今後は対象を拡大して、抑肝散を投与している認知症以外の患者や抑肝散以外の甘草含有漢方薬を対象に検体収集を行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
偽アルドステロン症の発現を予測する指標成分として、グリチルレチン酸(GA)に着目し、引き続きLC-MS/MSを用いたの血中濃度測定法の開発を進め、臨床応用したい。また、GAとは別の指標として副腎皮質ホルモンのコルチゾールとアルドステロンに着目し、これらについてもモニタリングを行いたいと考えている。これらホルモンの測定法はすでに確立されており、日常の臨床検査項目と同様に病院の検査機関において測定可能であり、汎用性が高い。 偽アルドステロン症の直接の原因は、GAによるコルチゾール代謝酵素(11β-水酸化ステロイド脱水素酵素:11β-HSD)の活性阻害に基づくことから、甘草含有漢方製剤投与による本ホルモンの変動も予測指標になり得ると考えられる。ただし、コルチゾールの場合は、分泌に日内リズムがあることと外因性ステロイド(ステロイド剤の併用)によって分泌が低下することから、モニタリングする条件(対象患者やタイミングなど)と測定値の評価が難しい。測定対象患者の選別や測定タイミングなどを検討して指標として使用できるか否かを詳細に検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初、甘草含有漢方製剤を服用している患者において、偽アルドステロン症の直接的な原因物質であるグリチルレチン酸(GA)の血中濃度モニタリングを行い、その血中濃度と初期症状の低K血症発現との関連を調査する予定であったが、GAの血中濃度測定法の開発が完了せず、臨床応用に至らなかった。 また、認知症に対する抑肝散投与患者に対象を絞った為、臨床検体(患者血清)の収集が進まず、甘草含有漢方製剤による低K血症を予測するための指標として血清GA濃度、コルチゾール値、アルドステロン値などを評価することができなかった。 今年度は、臨床検体の収集対象を拡大し、漢方製剤投与によるこれらの測定項目の変動が、低K血症の発現予測として利用できるか否かを明らかとしたい。また、研究成果を関連学会での発表や論文として公表する予定である。
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Research Products
(6 results)