2017 Fiscal Year Research-status Report
アルコール中毒症の改善作用を有する植物乳酸菌の分子機構解明
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16K08294
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
野田 正文 広島大学, 医歯薬保健学研究科(薬), 特任准教授 (40457289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 政則 広島大学, 医歯薬保健学研究科(薬), 共同研究講座教授 (30106801)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / プロバイオティクス / アルコール / 乳酸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、アルコール摂取量を増減させて昨年度に決定した条件を基に、腸内細菌叢解析ならびにメタボローム解析を行うべく、動物実験を行った。今回は、SN13T株生菌体の摂取によるアルコール中毒症状の改善作用を十分に発揮させる為、アルコール摂取開始一週間前より本株の摂取を始めることとした。また昨年度の研究結果から、バイオマーカーとして各種サイトカインの増減が認められなかったため、血液生化学検査をアルコール中毒症状の指標として取り扱うこととした。 実験の結果、アルコール摂取によって有意に上昇していた血清ASTやALT, アミラーゼの値が、SN13T株生菌体の摂取によって抑制される事が確認された。飼育期間終了後に各群のマウスより回収した小腸、盲腸、および大腸内容物に含まれる細菌叢の解析結果から、アルコールの摂取によって特異的に増減する細菌群の存在と、それらのうちSN13T株生菌体の摂取によってその変化の一部が抑制されることが確認された。とりわけ小腸における細菌叢の変化は顕著であり、盲腸および大腸の変化は小腸と比べると少なくはあったが、複数の分類群の変化が観察された。全ての部位に共通する変化として、Akkermancia属の変化が注目すべき点であった (アルコール摂取群で著しく減少、但しSN13T株生菌体を摂取させることでほぼ回復)。 また、メタボローム解析について、盲腸内容物を対象として実験を行った結果、アルコールの摂取により特異的に増減する化合物の存在が認められた。具体的には、腐敗アミンや特定の有機酸の量が増加する一方で、解糖系や核酸、胆汁酸やコレステロール代謝に関係する化合物の減少が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腸内細菌叢解析により、アルコールの摂取時に特異的に増減するものの、SN13T株の生菌体を摂取させることでその傾向が抑制される細菌分類群について、消化管のレベル毎に明らかにすることが出来た。また、メタボローム解析によって、盲腸内で細菌叢の変化と共に、内容物にどのような変化が生じているのか、明らかにすることが出来た。 これら2つの項目は本年度の実験計画の軸として掲げていた部分であり、現在この部分までの研究成果を取りまとめ、学術論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
細菌叢解析の結果から、複数にわたる分類群の増減が認められ、また種レベルでの同定には至らなかった為、現段階でマウス腸内から特定の細菌をピックアップし、特徴解析を行うという計画に進むのは困難と考えた。 また、メタボローム解析の結果、タンパク質の分解に伴って生じる腐敗アミンや、粘膜組織に対する腐食性を示すその他のアミン類が検出されていることからも、腸内における腐敗や、腸管組織に対する障害が生じている可能性が考えられている。 そこで、本年度は腸管上皮細胞およびマウス腸管内容物を用いたアッセイ系により、腸管バリア機能に対する障害改善作用を含め、in vitroの系で詳細なメカニズム解明を目的として実験を進める。
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Research Products
(12 results)