2016 Fiscal Year Research-status Report
薬用植物カンゾウにおけるグリチルリチン酸の高生産を目的とした分子生物学的研究
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16K08301
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
高上馬 希重 北海道医療大学, 薬学部, 准教授 (80342781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 光 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (30392004)
金 尚永 北海道医療大学, 薬学部, 助教 (70624287)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カンゾウ / Glycyrrhiza / グリチルリチン酸 / トリテルペノイド / 生合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬用植物「カンゾウ(甘草)」は世界で最も使用量の多い薬用植物である。カンゾウ(Glycyrrhiza uralensis)は中国および周辺諸国に自生のマメ科多年生草本植物である。安定供給のためにはカンゾウを農作物として生産する必要がある。現状は生産国の野生採集などに頼っており高品質なカンゾウの安定供給は重要な課題である。カンゾウの主薬用成分はトリテルペノイド化合物のグリチルリチン酸である。グリチルリチン酸含有率の低下による品質の劣化が憂慮される。 二次代謝化合物の生合成機構がグリチルリチン酸量に及ぼす影響は未だ不明の部分が多い。生合成遺伝子と生成化合物とを対応させて生合成のメカニズムを明らかにすることは、医薬品原料としてのカンゾウを効果的に生産することに有効である。本研究では、トリテルペノイド化合物の生合成酵素遺伝子の解析、発現制御によってトリテルペノイド生成を制御してカンゾウの品質と生産性を向上させることを目的として本研究に取り組んだ。 ①グリチルリチン酸高含量および低含量それぞれのカンゾウ個体から得られたストロンを用いて挿し木苗を得た。挿し木苗を育成、増殖するために人工気象条件下での植物体栽培を行い、植物育成設備にて植物育成用照明条件等の検討を行った。②カンゾウにおける唯一の外来遺伝導入手法である毛状根組織培養系の誘導および確立を行った。発芽直後の実生組織へのAgrobacterium rhizigenesの感染条件検討を行い、10%以上の効率でGFP蛍光を有する形質転換根培養細胞を作出した。③カンゾウの培養細胞(ストロン培養物)においてトリテルペノイド骨格C-28位酸化の機能を担うシトクロムP450モノオキシゲナーゼの1種であるCYP716A179を新たに見出した。CYP716A179はオレアノール酸、ウルソール酸、ベツリン酸の生成増加に関与することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グリチルリチン酸高含量、および低含量それぞれのウラルカンゾウ個体から得られたストロンを用いて挿し木苗を得た。挿し木苗を育成、増殖するために人工気象条件下での植物体栽培を行った。培養室内に設置した植物育成設備にて、植物育成用照明条件等の検討を行った。 カンゾウにおける唯一の外来遺伝導入手法である毛状根組織培養系の誘導および確立を行った。発芽直後の実生組織へのAgrobacterium rhizigenesの感染条件検討を行い、10%以上の効率でGFP蛍光を有する形質転換根培養細胞を作出した。 シトクロムP450モノオキシゲナーゼは植物中のトリテルペノイドの生合成に大きく関与している。その中でもCYP716Aサブファミリー群にある酵素種はトリテルペノイド骨格のC-28位の酸化に関与する。カンゾウにおいてはグリチルリチン酸やソヤサポニンなどのトリテルペノイド生合成に関してCYP88D6、CYP72A154、CYP93E3などのP450酵素種が明らかになっているが、CYP716Aサブファミリーに関しては未知であった。本研究において、ウラルカンゾウの培養細胞(ストロン培養物)においてトリテルペノイド骨格C-28位酸化の機能を担うCYP716A179を新たに見出した。CYP716A179はβアミリンからオレアノール酸、αアミリンからウルソール酸、ルペオールからベツリン酸の生成に関与することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
トリテルペノイド化学成分分析、代謝遺伝子解析に用いるための植物材料の確保のために、グリチルリチン酸高含量、および低含量個体からのクローン植物体の作成を行う。この手法としては植物組織培養によるクローン植物体を用いる。そのために誘導および増殖に関する効果的な条件検討を行う。さらに、ここで得られたクローン植物体に対して、外来遺伝子を導入する技術開発を行う。 トリテルペノイド生合成に関わる新たな酵素遺伝子の探索、機能解析を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が1,322円生じたが、年度支出額を年度予算額内とするためには妥当な額であったと考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に物品費(消耗品)として試薬購入費として執行する計画である。
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Research Products
(6 results)