2016 Fiscal Year Research-status Report
分子生物学的手法を用いた動物由来生薬の基原生物鑑定法の構築
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16K08304
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
中西 宏明 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90392274)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 動物基原生薬 / ミトコンドリアDNA |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、阿膠、牛黄、熊胆、麝香、亀板、土鼈甲、烏賊骨および牡蠣について、抽出法およびシークエンス条件を検討した。なお、これらの生薬は、日本国内の漢方専門薬局から購入した。 DNAの抽出および精製は、市販のDNA抽出キット(QIAGEN DNA Mini kit)のプロトコールを若干改良することにより一部の生薬について可能になった。具体的には、キットでの抽出操作後に、TE飽和フェノール処理を加えた。また、亀板、土鼈甲および烏賊骨については、抽出操作前にEDTAによる脱灰処理も加えた。しかしながら、現在のところ、阿膠および牡蠣についてはDNA抽出できず、さらなる検討が必要であった。 シークエンスは、12S_rRNA、16S_rRNAおよびcytochrome_Bをターゲット遺伝子として、すでに論文で発表されているプライマーを用いて実施した。その結果、プライマーと生薬との組み合わせで向き不向きがあるものの、DNAが抽出できた生薬のいずれからも塩基配列を決定でき、BLASTによる相同性検索結果においても、基原動物として妥当な結果が得られた。現段階では、牛黄200mg、熊胆10mg、麝香50mg、亀板および土鼈甲500mg、烏賊骨1gを用いれば、本課題で構築したプロトコールにて塩基配列を決定できた。 一方、東京都江戸東京博物館および警察庁科学警察研究所との共同研究においては、東京都江戸東京博物館が所蔵する「江戸時代の診療所に保管されていた患者の吐塊物」の分析を行い、本課題で構築したプロトコールを用いて、吐塊物が(牛黄や熊胆ではなく)ヒト由来の胆石であることを示唆することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、短期留学の期間があったため、本課題の進捗はやや遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、まだ検討途中の阿膠および牡蠣に加え、平成28年度に着手する予定であった水牛角および鹿茸のDNA抽出法の検討を行う。これらについて、DNA抽出法が構築でき次第、海馬、蛇胆、地竜、蝉退、反鼻、白僵蚕および虻虫といった、姿全体が用いられる生薬について、DNA抽出法を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度に短期留学期間があったため、その間、研究を進めることができず、結果として予算を次年度に繰り越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、平成28年度に達成できなかった項目に加え、平成29年度に実施予定の実験を行うとこから、試薬や消耗品購入を中心に予算を使用する予定である。なお、研究対象とする生薬はほぼ購入済みである。
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