2017 Fiscal Year Research-status Report
ホソバオケラの実用栽培研究ー高知県におけるソウジュツの生産をめざして
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16K08316
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Research Institution | The Makino Memorial Foundation of Kochi Prefecture |
Principal Investigator |
水上 元 公益財団法人高知県牧野記念財団, その他部局等, 理事長 (30128219)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 薬用資源植物 / 生薬の国内生産 / ホソバオケラ / 蒼朮 / 実用栽培法の開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
高知県におけるホソバオケラの実用栽培の可能性を探るために、植物園内の圃場を用いた基礎的な栽培試験と高知県内の農家との共同による委託栽培試験を並行して実施している。 基礎栽培試験については、2015年~2016年の期間に実施した県内の種々の土壌を用いる栽培試験の結果について詳細な解析を実施した。。高知県内の農業用土壌の約40%を占めるのは水田として利用されている灰色低地土であるが、この土壌で栽培したホソバオケラは、薬用部である根茎の増殖率が非常に低く(2年間の栽培で約2倍)、また栽培期間中に白絹病菌の感染等によって枯死する個体が多かった。一方、畑地として利用される土壌のうち最も分布面積の大きい(約20%)褐色森林土でも個体数の減少を認めたが、砂丘未熟土や赤色土では根茎の増殖率が高く(約6倍以上)、枯死する個体もなかった。ただしこれらの土壌の分布は極めて限定的である(数%以下)。精油含量は、収穫した全ての個体で日本薬局方の規定を上回っていたが、灰色低地土でやや高くなる傾向を示した。全体として根茎の増殖率と精油含量には統計的に有意な負の相関が認められた。精油成分であるatrctylodinとeudesmolの分離定量を行ったが、その組成には土壌の種類は大きな影響を与えなかった。 委託栽培試験では、高知県東部の土佐清水市と佐川町での栽培が終了した。これらの圃場はいずれも灰色低地土からなる水田跡地である。土佐清水市では白絹病の発生、佐川町では栽培期間初期の植え付け根茎からの出芽率が低いことによって個体数が大きく減少し、根茎の収量は極めて低かった。現在、高知県東部に委託栽培地を移しつつあり、本年度は新たに安田町で委託栽培試験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実用栽培試験圃場で充分な収量が得られていない。種根茎からの出芽率が低いことや病害の発生を原因とする個体数の減少がその主要な要因であり、この点の解決になお難渋している。種々の土壌を用いた基礎的な検討の結果では、水田として用いられる灰色低地土がホソバオケラの栽培には最も不適であるという結果が得られており、水田跡地の利用という観点からは灰色低地土での栽培について、さらに検討を行うことが必要になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
①植え付け後の種根茎からの出芽率が悪い、②白絹病を主とする病害による枯死率が高いという2つの課題を解決するために、新しく開始している委託栽培圃場では、種根茎の植え付け時期を変更したり、土壌の過湿を避けるために畝高を高くするなどの試行を実施している。 現在上記のような観点を含めて、県内3カ所の農家圃場で委託栽培を実施しており、2018年秋にはこれらの結果が得られるので、これまでの検討結果に基づいて、高知県内でのホソバオケラの実用栽培の可否について一定の結論を出したい。
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Causes of Carryover |
委託栽培圃場での個体数の減少が予想以上に多くなったことに伴い栽培委託費としての使用額が、計画を下回ったことによる。昨年度から委託栽培圃場を増やしており、生産量も上昇することが期待されるので、その部分の経費として充当することを計画している。
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Research Products
(2 results)