2017 Fiscal Year Research-status Report
ミクログリアサブタイプの機能分化制御剤によるアルツハイマー病治療法の開発
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16K08328
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
川原 浩一 新潟薬科大学, 薬学部, 准教授 (10347015)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 1型ミクログリア / GPNMB / アルツハイマー病 / 視覚障害 / 脳白質障害 / 精神疾患 / 強迫性障害 / 毛繕い |
Outline of Annual Research Achievements |
ミクログリア亜種(1型と2型)の機能・分化を制御しうる化合物を見出し、アルツハイマー病の新規治療法につなげる研究を行っている。具体的には、主に、レチノイドと9F5抗原(GPNMB)に興味を持って研究を行っている。本年度は、特に後者の研究において、進展が見られた。本年度に得られた知見は以下の通りである。モリス水迷路試験により、Gpnmb-/-マウスの空間認知能力を解析していたところ、老齢のGpnmb-/-マウスは、Gpnmb+/-マウスと比較して、視覚機能に障害がみられた。また、Gpnmb-/-ならびにGpnmb+/-マウスは、10月齢~24月齢において、強迫的な毛繕いと抜毛行動を示す個体が存在した(8/61匹)。この毛繕い行動異常は、ハロペリドールの腹腔内投与により軽減された。また、毛繕い行動異常を示した老齢のGpnmb+/-マウスにおいて、GPNMBタンパク質は、脳幹を含む脳白質に限局し、M1マーカーであるCD11cの局在と酷似していた。IL-1βも同様に、脳白質に発現していた。以上のことから、GPNMB陽性M1様細胞(1型ミクログリア)は、何らかの脳白質障害を伴う精神疾患に関与する可能性が示唆された。しかしながら、解析した個体数が少ないため、確認の実験が必要である。 本年度は、アルツハイマー病モデルマウスにおけるGPNMBの役割を解析する際は、視覚機能や精神症状も交絡要因となる可能性があり、注意が必要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ミクログリア亜種(1型と2型)の機能・分化の分子基盤を解析し、それらを制御しうる化合物候補の同定、さらにはそれらをアルツハイマー病の新規治療法に展開することを目的としている。レチノイドの研究については、2018年1月に行われた国際会議において、これまでの成果を発表することができた。また、共同研究者のお力添えを賜り、2018年1月に米国特許を取得することができた。一方、我々が1型ミクログリアのマーカー分子として注目するGPNMBの研究については、その個体レベルでの役割を観察することができた。これは、基礎的ではあるが新しい知見である。以上より、おおむね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
アルツハイマー病におけるGPNMBの役割を解明するために、アルツハイマー病モデルマウス(APP23)とGpnmb+/-マウスの交配を行い、9月齢のAPP;Gpnmb+/-とAPP;Gpnmb+/+との認知機能の違いを調べている。上述した通り、老齢Gpnmb-/-マウスは、視覚機能に障害が見られたため、視覚機能を必要とする認知機能解析(モリス水迷路試験)では、ヘテロ接合型での検討を進めている。最近文献調査を行ったところ、アルツハイマー病モデルマウスの老人斑周囲に集積するミクログリアは、神経変性疾患特異的ミクログリアとよばれ、そのマーカー分子の一つとしてGpnmbが同定された。しかしながら、老人斑周囲におけるGPNMBの機能は未だ明らかとなっていない。老人斑におけるGPNMBの役割を組織化学的に調べる場合は、ホモ接合型で検討した方がよいと考えている。
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Causes of Carryover |
生化学試薬やgenotypingを行うための分子生物学試薬を購入する。
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Research Products
(7 results)