2017 Fiscal Year Research-status Report
医薬応用に向けたジヒドロピリミジン誘導体のレチノイドとしての機能開発
Project/Area Number |
16K08335
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
西村 良夫 安田女子大学, 薬学部, 講師 (60431516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 秀与 城西大学, 薬学部, 助教 (60614055)
久保 貴紀 安田女子大学, 薬学部, 講師 (90435751)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ジヒドロピリミジン / レチノイド / タミバロテン / ベキサロテン / RAR / RXR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ジヒドロピリミジン(以下、DP)誘導体のレチノイドとしての機能開発を行うものであり、DP 誘導体の精密な分子設計と RAR、RXR に対する作用の詳細な検討・評価を行い、医薬品開発につながる高活性なリガンドとなる合成研究として、6-無置換 2-チオキソ-4-アリール DP 5-カルボキシラートを酸触媒を用いて合成する方法を開発した。ビギネリ反応は通常 β-ケトエステルなどを反応成分の一つに用いるが、β-ホルミルエステルは入手困難で用いることができなかった。反応剤を工夫することで、上記の6-無置換誘導体を効率的に合成できた。現在有機分子触媒を用いる不斉合成へ展開している。また、前年度のランダムスクリーニングにおいて比較的活性の高かった 2-アリールアミノ体について、30 種の化合物を合成したので、現在活性を調べている。 2-アリールアミノ DP はがん細胞に対して細胞毒性を示すが、対応するピリミジンは不活性であることが分かっている。これは互変異性体であることが関与している可能性があった。そこで、生体内での存在状態に関して知見を得るため、2-置換 DP 誘導体の温度可変 NMR を測定し、算出した互変異性体比(1,4-:1,6-ジヒドロ体)に基づいて van’t Hoff plot を行った。熱力学パラメーターから、比較的共役系の短い 1,4-ジヒドロ体がエンタルピー的に有利であった。例外的に、2-アミノ DP は 1,6-ジヒドロ体が極端に安定であった。これらを裏付けるため、DFT計算を行った。真空中では、双極子モーメントから 1,6-ジヒドロ体が 1,4-ジヒドロ体より安定だが、2 位の置換基の効果(共鳴、誘起)と溶媒の極性が要因に加わると、熱力学的安定性が逆転することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
反応剤を工夫することで、6-無置換 2-チオキソ-4-アリール DP 5-カルボキシラートを酸触媒を用いて合成することに成功した。ジヒドロピリミジン誘導体のみならず、互変異性現象(例えば、ケトーエノール間)の本質を解明するために、温度可変 NMR、van’t Hoff plot、DFT計算を併用して 2位置換基効果について明らかにすることができた。生体内での存在状態、すなわち受容体へ酵素との相互作用における有用な知見である。HT29 に加えて、HL60 に関する細胞毒性試験を実施中であり、レチノイン酸、タミバロテンなどの医薬品との比較データを整理中である。比較的活性の高かった 2-アリールアミノ体について、30 種程度の化合物を新たに合成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、これまで同様に合成研究を進めつつ、互変異性現象の本質を解明するためNMR 測定や DFT 計算を併用して物理化学的研究を行う。HL-60 以外の腫瘍細胞に対してのスクリーニングを行うとともに、正常細胞に対する毒性試験も行う。腫瘍細胞の増殖抑制効果について PI 染色による細胞周期解析および Annexin/PI 染色によるアポトーシス/ネクローシス解析により多面的に評価する。また、分化誘導効果についてフローサイトメーターを用いた CD11b および CD14 分化マーカー解析や、ギムザ染色による形態観察によって確認、解析する。2. 合成誘導体の RAR および RXR 各サブタイプに対する選択性について、レポータージーンアッセイに基づいた核内受容体アッセイキットまたは表面プラズモン共鳴を用いた Biacore を用いて明らかにする。論文発表や学会発表など成果発表を積極的に行っていきたいので、研究分担者との連絡を密にしながら進めたい。
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Causes of Carryover |
(理由)生物活性試験について、試験直前での試薬購入などを予定していたが、合成サンプルの送付時期と試薬購入が年度をまたぐタイミングとなったため (使用計画)新年度に、生物活性試験のために使用する
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Research Products
(6 results)