2016 Fiscal Year Research-status Report
黄色ブドウ球菌毒素SSLファミリーの病原性における役割の解明と創薬への応用
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16K08345
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
伊藤 佐生智 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 講師 (70308013)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細菌毒素 / 血液凝固 |
Outline of Annual Research Achievements |
Staphylococcal superantigen-like protein(SSL)はスーパー抗原と類似の立体構造を持つ黄色ブドウ球菌の毒素ファミリーである.私たちはSSL10がプロトロンビンに結合して血液凝固を抑制すること,この毒素はプロトロンビンのみならず第Ⅶ,Ⅸ,Ⅹ因子などのビタミンK依存性凝固因子にも結合すること,SSL10と血液凝固因子の相互作用にはGlaドメインとγ-カルボキシグルタミン酸修飾が必須であることを示している.本年度はSSL10の血液凝固因子との相互作用に必要な最小機能領域を同定を行った.プロトロンビンと結合するSSL10とIgAおよび補体C5に結合するが,血液凝固因子との相互作用を示さないSSL7の間で領域を入れ替えたドメインスワップ体の作成と,ELISAの手法を応用した固相結合アッセイによりプロトロンビン結合活性を評価する過程を繰り返し,SSL10のプロトロンビン結合領域を絞り込んだ.17種類のSSL10-SSL7間のドメインスワップ体のプロトロンビン結合活性を評価した結果から,197アミノ酸残基からなるSSL10には各々30アミノ酸程度からなる二か所のプロトロンビン結合領域が存在することが示された.この結果得られたSSL10由来の最小領域を調製し,プロトロンビンの結合活性を評価したところ,これらのペプチドは単独でもプロトロンビン結合活性を示した.今回同定できたSSL10の最小機能領域は既存の抗凝固薬とは異なった作用機序を持つ,細菌毒素由来の新たな抗凝固薬の創薬につながると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画は新たなSSLの標的分子の同定と,標的分子の結合に関わるSSLの最小領域の特定からなる.前者については現在予備的な検討を終えたところであるが,後者についてはSSL10の血液凝固因子結合の最小機能ペプチドの作成に成功し,論文発表まで行うことができた.全体としてはほぼ当初の予定に従って進行していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はSSL10以外のSSLについても最小機能領域の特定を目指す.これについてはほぼ手法が確立したので,私たちが標的を見出したSSLについて解析を進める.また新たなSSLの標的分子のスクリーニングをさらに対象を広げて行う.
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Causes of Carryover |
本年度行った研究は,当初予定したよりも少額の研究費で遂行することができたため.これは試薬購入先を安価なところに変更したり,必要最小限の試薬を購入したり,所属分野にて保管していた試薬を優先して使用するようにしたためと思われる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は動物実験等,前年度に比してコストのかかる研究を行う予定である.配分された研究費を有効に使用したい.
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Research Products
(7 results)