2017 Fiscal Year Research-status Report
多機能性タンパク質ヌクレオリンが介在するカドミウムと鉛による血管病変発症機構
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16K08350
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
藤原 泰之 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (40247482)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヌクレオリン / 動脈硬化 / 血管内皮細胞 / 重金属 / カドミウム / 鉛 / ヒ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
多機能性タンパク質であるヌクレオリンが、血管内皮細胞における血管内皮増殖因子(VEGF)の遺伝子発現誘導に関与することが報告されている。また、ヌクレオリンが転写因子に結合し、その転写活性を調節することも報告されている。したがって、血管内皮細胞のヌクレオリンが何らかの転写因子に作用し、遺伝子発現の調節を介して血管新生や血管傷害の修復に関与している可能性が考えられる。 平成29年度は、血管内皮細胞におけるカドミウムに対する細胞防御因子の発現誘導機構におけるヌクレオリンの関与について検討した。カドミウムの毒性軽減に関わる転写因子としてNrf2およびMTF-1が知られている。血管内皮細胞をカドミウム処理したところ、Nrf2の下流遺伝子(HO-1、NQO-1)およびMTF-1の下流遺伝子(MT-1A、MT-2A)の発現上昇が確認されたことから、血管内皮細胞においてもカドミウム曝露に応答してMTF-1およびNrf2の活性化が引き起こされると考えられる。次にsiRNAによってヌクレオリンをノックダウンした血管内皮細胞を作成し、カドミウムによる遺伝子発現レベルを確認したところ、ヌクレオリンのノックダウンはカドミウムによるHO-1およびNQO-1の発現上昇を有意に低下させた。一方、ヌクレオリンのノックダウンはカドミウムによるMT-1AおよびMT-2Aの発現上昇を低下させることはなかった。したがって、ヌクレオリンは血管内皮細胞におけるカドミウムによるNrf2の活性化機構を正に制御している可能性が考えられた。 今後、血管内皮細胞の核内におけるヌクレオリンとNrf2の相互関係ならびにカドミウムの毒性発現との関係性においてさらなる検討を行うことにより、カドミウムによる血管毒性発現メカニズムの解明につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、血管内皮細胞のヌクレオリン発現と細胞内分布に対するサイトカイン・増殖因子並びに重金属の影響を明らかにすることを目的に検討を行い、一定の成果を得ることができた。 今年度(平成29年度)は、血管内皮細胞におけるカドミウムに対する細胞防御因子の発現誘導機構におけるヌクレオリンの関与について検討し、「研究実績の概要」で上述したように、ヌクレオリンは血管内皮細胞におけるカドミウムによるNrf2の活性化機構を正に制御している可能性を見出した。不十分な点は少しあるものの、概ね研究計画にそって順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、研究計画にそっておおむね順調に進行しているので、基本的には平成30年度も研究計画に基づき研究を遂行していく予定である。また、未解決・未解明の点については引き続き検討を行い、研究成果を公表できるように実験データの完成度を上げていく。 平成30年度は、平成29年度に引き続き、血管内皮細胞の機能異常におけるヌクレオリン分子の関与、並びに重金属の毒性発現へのヌクレオリンの関与について検討を行う。また、マウスを用いた個体レベルでの検討も推進する予定である。
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Causes of Carryover |
年度末に発注した物品の納入が遅れ平成30年度に入ってから納品されたため、次年度使用額が少し発生した。また、当初の予定購入金額よりも安く購入できた物品があった。平成30年度分の助成金と合わせて適切に使用していく。
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