2016 Fiscal Year Research-status Report
小腸上皮における薬物輸送解析のためのエンテロイドを用いた新規手法の確立
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16K08363
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
菅原 満 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (60332467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武隈 洋 北海道大学, 薬学研究院, 准教授 (00396293)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エンテロイド / 小腸上皮細胞 / トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス小腸からエンテロイドの調製に成功した。調製したエンテロイドからRNAを抽出し、小腸に発現する薬物排出トランスポーターの発現を確認した。定量的RT-PCRの手法を用いてP糖タンパク質とMRP2の発現量の培養日数による変化をみたところ、培養3日目に比べて7日目の方が多く、エンテロイドをトランスポーターの機能評価に用いる場合には、培養日数の影響を考慮して条件を設定する必要があることが示された。 エンテロイドの外側から内腔への輸送は、小腸における漿膜側から頂側膜側への輸送を示す。そこで、エンテロイドを用いて、P糖タンパク質の基質である蛍光物質の輸送を、内腔の蛍光強度の変化を利用して観察した。その結果、エンテロイド内腔の蛍光強度の増強が認められたことから、基質が内腔に蓄積していることが示された。また、ここで認められたエンテロイド内腔への蛍光物質の蓄積は、氷冷下あるいはP糖タンパク質阻害剤であるキニジンやベラパミル、シクロスポリン共存下で阻害され、内腔の蛍光強度が減少した。さらに、P糖タンパク質による輸送がATPをエネルギー源とすることから、ATP産生系阻害剤を添加したところ、同様に内腔への蛍光基質の蓄積が減少した。このとき、エンテロイドの内腔に比べて周囲の細胞層の方が強い蛍光を示した。頂側膜に発現するP糖タンパク質の活性が阻害されたことにより、エンテロイド周囲の細胞内に蓄積した基質が細胞外に流出できなかったためと考えられる。これらのことから、本実験系が薬物排出タンパク質の機能を評価するのに有用であることが示唆された。一方、動物実験によって生理的条件下で消化管吸収ににP糖タンパク質による排出が優位に関与すると考えられる薬物候補が得られた。したがって今後、エンテロイドを用いても評価可能か検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は調製したエンテロイドにおける動態関連タンパク質発現の解析と物質輸送活性の解析の両面から検討している。今年度の当初計画では、タンパク質発現の解析の結果を先行する予定であったが、代謝酵素の関するデータを後回しにした。一方で、基質輸送活性に関する検討は当初計画以上に進んでおり、研究全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画にしたがい、以下の検討を進める。 1.薬物および栄養成分の輸送に関わるトランスポーターの発現量解析 2.代謝酵素の発現量解析 3.エンテロイド中の絨毛様細胞の割合の把握 4.エンテロイドを用いた基質輸送機能解析手法の確立
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Research Products
(1 results)