2016 Fiscal Year Research-status Report
細胞外マトリックスCSPG4を分子標的としたがん治療戦略の構築
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16K08375
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
伊藤 邦彦 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (90221770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 和幸 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (90514589)
辻 大樹 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (90565615)
平井 啓太 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30740203)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | IgG / リコンビナントFab / CSPG4 / メラノーマ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はCSPG4を認識するリコンビナントFab(rFab)AHSAを出発材料として完全IgG発現系の構築とAHSA-IgGの精製法の確立と抗原結合活性について検討した。あわせてがん組織におけるCSPG4発現スペクトルの確認を行った。 AHSAのVHおよびVL領域をPCRにより増幅したのち、pIGGベクターに順次挿入することにより、pIGG-AHSAを構築した。精製プラスミドDNAをLipofectamine3000を用いて293Tにトランスフェクションさせ72時間後に培養上清を回収し、CSPG4陽性MDA-MB-435Sに対する反応性を指標にIgG抗体の生成を確認した。複数回のトランスフェクションにより得られた培養上清を限外濾過により濃縮したのち、プロテインAカラムを用いてIgGを精製した。A280の測定より、精製IgGは培養上清10mLあたり100ug程度の平均回収率であった。また、SDS-PAGE上で150kDa付近に単一バンドとして検出された。精製IgG(以下AHSA-IgG)の免疫染色における至適濃度を検討した。その結果、AHSA-IgG 20ug/mLでAHSA40ug/mLと同程度の反応性を示すことが明らかとなった。がん組織におけるCSPG4発現スペクトルの確認については、まず、CSPG4の発現が確認されているメラノーマについて市販の組織マイクロアレーを用いて検討を行った。その結果、メラノーマ組織、特に転移メラノーマ組織のメラノーマ細胞が強く染色されたのに対し、対照の正常組織は全く染色されず、AHSA-IgGが高いがん細胞選択性を示すことが明らかとなった。 今年度はAHSAのIgG発現系の構築を行い、抗原結合活性を有するAHSA-IgGの創出に成功した。また、AHSA-IgGがメラノーマ選択的に反応することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の計画通りに進捗していると思われる。ただ、がん組織におけるCSPG4発現スペクトルの確認については、今のところ、メラノーマ組織についての検討にとどまっているので、次年度は引き続き、CSPG4の発現が確認されている癌種を中心に検討を進め、データの蓄積を行っていきたいと考えている。また、IgG発現系についてもIgG産生が最大となるような条件検討を行うとともに、in vitroおよびin vivoの細胞障害活性検討のための十分なIgG量の確保のため、スケールアップしていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は研究実施計画にあるAHSA-IgGのin vitroおよびin vivo細胞障害活性評価系の構築とAHSA-IgGの癌治療における有用性を評価していく予定である。また、平成28年度の研究計画にあるがん組織におけるCSPG4発現スペクトルの確認は、今年度も引き続き継続して検討を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究が思いの外順調に進んだため、消耗品代が当初の見積金額より大幅に下回った。旅費として計上した部分については、学会演題登録までに結果がまとまらず、発表を見送ったため、未使用であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度からの継続実験として複数の組織マイクロアレイを購入予定であり、AHSA-IgG発現系の至適化およびスケールアップを行う予定である。また、AHSA-IgGの細胞障害活性測定においてもin vitro系では培養関係の消耗品、in vivo系ではSCIDマウスの購入など、昨年度からの繰り越し分と本年度分を合わせた金額相当の支出が見込まれる。
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