2016 Fiscal Year Research-status Report
C型肝炎時の肝細胞内ヘム代謝に着目した薬剤性肝障害メカニズムの解明
Project/Area Number |
16K08377
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
堀江 利治 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (90120154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中埜 貴文 帝京平成大学, 薬学部, 講師 (40720793)
濱田 和真 帝京平成大学, 薬学部, 講師 (90596884)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | C型肝炎 / 薬剤性肝障害 / ヘム / ヘムオキシゲナーゼ / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
薬剤性肝障害を惹起する薬物の中には、C型肝炎の罹患により肝障害の発生率が増加するものが臨床上報告されているが、そのメカニズムは不明である。肝細胞には、種々のストレスに対する防御システムが高度に発達している。その一つがヘムオキシゲナーゼ(HO-1)であり、HO-1はヘムを分解することで、抗酸化、抗炎症作用を持つビリベルジンや一酸化炭素を産生し、これらの分解産物の作用を介して細胞保護的に機能し、肝障害を抑制する。我々は、C型肝炎ウイルス(HCV)コア蛋白質が細胞内のヘム生合成とヘム分解酵素であるヘムオキシゲナーゼ(HO-1)誘導能を低下させること、すなわちヘムの生合成とHO-1によるヘム分解という一連のヘム代謝を攪乱させることを見出した。そこで本課題では、C型肝炎時の肝細胞内のヘム代謝攪乱により、HO-1のヘム分解機能を介した肝細胞の抗酸化能、抗炎症能が低下することで薬剤性肝障害が増悪するという仮説を立て、これを実験的に実証することを目的とした。そこで、HCVコア蛋白質安定発現細胞を用いて、tert-Butyl Hydro peroxideによる酸化ストレスへの感受性をLDH漏出試験により評価したところ、HCVコア蛋白質発現細胞では、酸化ストレスへの感受性が増大していることが明らかになった。さらに、薬物肝障害を起こすことが臨床上報告されているアセトアミノフェンについて同様に評価したところ、アセトアミノフェンの毒性への感受性は逆に低下していることが明らかになった。アセトアミノフェンによる肝障害はその活性代謝物が毒性を示すことが報告されていることから、HCVコア蛋白質がその代謝過程に影響を及ぼしたために、感受性が低下したと考えられる。以上のことから、C型肝炎時には、酸化ストレスに対する感受性のみならず、薬剤の代謝過程に変動が起こっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の検討により、HCVコア蛋白質安定発現細胞においてはtert-Butyl Hydro peroxide由来の酸化ストレス、及びアセトアミノフェンの毒性への感受性が変動していることが見出された。一方で、C型肝炎時の薬剤性肝障害リスク変動を説明するには、より詳細なメカニズム解析が必要であることが明らかとなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
HCVコア蛋白質発現細胞において、酸化ストレスに対する感受性の変動が起こっている可能性が示唆されたことから、抗酸化剤、HO-1の強制誘導などの種々検討によりそのメカニズムを検討する。また、薬物の代謝過程も同様に変動が起こっている可能性が示唆されたことから、薬物代謝酵素であるCYPなどに着目し、各酵素活性を測定することで感受性変動のメカニズムについて検討を行っていくことを考えている。
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Causes of Carryover |
使用期限の観点から、購入を留保している試薬、消耗品があるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の研究推進方策に従い、必要消耗品の購入に使用する計画である。
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Research Products
(3 results)