2016 Fiscal Year Research-status Report
ヒト血液脳関門有機カチオン-プロトン交換輸送系の薬物認識性と実体の解明
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16K08381
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
出口 芳春 帝京大学, 薬学部, 教授 (40254255)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 慧 帝京大学, 薬学部, 助教 (10625304)
黄倉 崇 帝京大学, 薬学部, 教授 (80326123)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / 基質認識性 / トランスポーター / 有機カチオン-プロトン交換輸送系 / ヒト脳移行性 / 塩基性薬物 / ヒト血液脳関門モデル細胞 / 有機カチオントランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヒト血液脳関門(BBB)の有機カチオン-プロトン交換輸送系の薬物認識性および輸送分子の実体を解明することである。平成28年度は市販中枢作動薬27種のBBB細胞(hMEC/D3)への取込みクリアランスを測定すると共に、ジフェンヒドラミン(有機カチオン-プロトン交換輸送系の典型的基質)に対する感受性を調べた。ジフェンヒドラミンによる阻害実験の結果から、70%以上阻害がかかる薬物群をジフェンヒドラミン感受性、それ以外の薬物群をジフェンヒドラミン非感受性の2群に分類した。ジフェンヒドラミン非感受性群では、取込みクリアランスと脂溶性の間に有意な正の相関関係がみられた。一方、位相幾何学的極性表面積(tPSA)との間には負の相関関係がみられた。この結果は、単純拡散機構で脂質膜を透過する薬物によく見られることから、ジフェンヒドラミン非感受性群に分類される薬物は主に単純拡散機構でBBBを透過することが推定された。一方、ジフェンヒドラミン感受性薬物の取込みクリアランスと物性(脂溶性およびtPSA)の間には有意な相関関係は見られなかった。さらにジフェンヒドラミン感受性の薬物群にはKpuu値(脳内非結合形濃度/血漿中非結合形濃度の比)の高い薬物が50%以上あり、その中には、ピリラミン、ベラパミル、クロニジン、トラマドール、オキシコドン、バレニクリンなどの有機カチオン-プロトン交換輸送系の基質となる薬物が含まれていた。以上の結果から、有機カチオン-プロトン交換輸送系の基質認識に薬物の脂溶性およびtPSAの関与は少ないことが示唆された。また、有機カチオン-プロトン交換輸送系の基質薬物のファーストスクリーニングにジフェンヒドラミンによる阻害実験が有用であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はhCMEC/D3細胞を用いて市販中枢薬27種の輸送活性を測定し、主に薬物の物性と輸送活性との関連性について検討した。当初は有機カチオン-プロトン交換輸送系の基質となる薬物の構造上の共通性をLigand-Basedファーマコフォア解析で明らかにする予定であったが、結論を得るまでには至らなかった。しかし、有機カチオン-プロトン交換輸送系に認識性の高い薬物の物性との関係、阻害剤に対する効果についてある程度の解答を得ることができた。一方、この研究に中で有機カチオン-プロトン交換輸送系に対する新たな基質薬物を見つけることができ、その詳細な機能解析を投稿論文として投稿することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の課題はほぼ達成したが、残された課題は有機カチオン-プロトン交換輸送系の基質探索に必要な化学構造上の特徴を明らかにすることである。そのために、薬物の物性のみならず、他のトランスポーターへの認識性など、情報を集めて整理する。この課題とは別に、有機カチオン-プロトン交換輸送系の分子実体をみつけるため、hCMEC/D3細胞のみならず、他のBBB細胞(正常ヒト脳毛細結果内皮細胞, iPS細胞由来BBB細胞)を用いて有機カチオン-プロトン交換輸送系輸送活性の差異を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度の計画の中で、MDR1およびBCRPノックダウン細胞を用いた薬物の取込みクリアランスも検討する予定であったが、予備実験の段階で期待された結果が得られなかったため、この実験は断念せざるをえなかった。従って、この実験に必要な費用が未使用額となり次年度使用することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はhCMEC/D3細胞の他、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所川端博士との連携研究でiPS細胞由来BBB細胞を用いて実験を行う。実験は主に川端博士の研究室(大阪府茨木市)で行うため、実験試薬等の購入・運搬、交通費、滞在費が必要である。未使用学はこれらに掛る費用とする。
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Research Products
(6 results)