2017 Fiscal Year Research-status Report
ヒト血液脳関門有機カチオン-プロトン交換輸送系の薬物認識性と実体の解明
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16K08381
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
出口 芳春 帝京大学, 薬学部, 教授 (40254255)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 慧 帝京大学, 薬学部, 助教 (10625304)
黄倉 崇 帝京大学, 薬学部, 教授 (80326123)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / 基質認識性 / トランスポーター / ヒトiPS細胞 / プロトン-有機カチオン交換輸送系 / ヒト脳移行性 / 塩基性薬物 / ヒト血液脳関門モデル細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「ヒト血液脳関門(BBB)のプロトン-有機カチオン交換輸送系の薬物分子認識性および実体を解明すること」であった。昨年度はヒトBBB細胞の1つhCMEC/D3細胞を用いて、プロトン-有機カチオン交換輸送系の特異的基質探索および認識性の解明に取り組んできた。27種の市販中枢疾患治療薬を対象にhCMEC/D3細胞への取り込みクリアランスを解析したところ、薬物の化学構造や物性からプロトン-有機カチオン交換輸送系に対する認識性を推定することは容易でないことがわかった。一方、基質薬物のファーストスクリーニングにジフェンヒドラミンによる阻害実験が有用であり、そこから新たにバレニクリンがプロトン-有機カチオン交換輸送系の基質であることを明らかにすることができた(Kurosawa T. J Pharm Sci, 106, 2576(2017)). 本年度は異なるヒトBBB細胞を用いたトランスポーターの発現解析と輸送活性の変動解析を目的とした。BBB細胞としてiPS由来ヒト脳毛細血管内皮細胞(hiPS-BMEC)を用いた。ヒトiPS(IMR 90-4)をLippmannらの方法に従って脳毛細血管内皮細胞(hiPS-BMEC)へと分化誘導したところ、強固な細胞間密着性を有する細胞を得ることができた。この細胞の栄養物質並びに薬物トランスポーターの遺伝子発現を検討したところ、hCMEC/D3細胞における発現と弱い相関がみられた。モノカルボン酸輸送系、BCRPなどのトランスポーターの発現はhCMEC/D3細胞に比べて10倍以上高かった。一方、P-gpの発現は弱かった。このように、hiPS-BMECとhCMEC/D3細胞では遺伝子発現に差異がみられたものの、ジフェンヒドラミンを基質とするプロトン-有機カチオン交換輸送系の輸送能は保持していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の課題はほぼ達成したが、今回作製したiPS-BMECのプロトン-カチオン交換輸送系の活性は、hCMEC/D3細胞と大きな差異はなく、輸送活性の変動を利用した差分解析には至らなかった。しかし、本助成金をもとにiPS-BMECを調整できたことは大きな進歩であり、論文化を急いでいるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本申請者は既にマイクロアレイおよびqPCR解析から、hCMEC/D3細胞で発現し機能していると推測される58のトランスポーターを選別している。これらの遺伝子の発現をsiRNA法にてノックダウンした細胞を用いてジフェンヒドラミンあるいはバレニクリンの取り込みを測定し、輸送活性が30%以下に低下した遺伝子を抽出する。その後、発現系を用いて輸送活性を測定しプロトン-カチオン交換輸送系の実体解明に迫る。
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Research Products
(6 results)