2016 Fiscal Year Research-status Report
脳内異物解毒機構の変動に基づく適正な脳精神疾患薬物治療戦略の構築
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16K08385
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
加藤 美紀 名城大学, 薬学部, 准教授 (70345594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
灘井 雅行 名城大学, 薬学部, 教授 (00295544)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 薬物代謝 / 脳疾患 / UGT / CYP / 発現変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラットでのカイニン酸(KA)誘発性のてんかん発作は、ヒトの側頭葉てんかんで認められる神経細胞の傷害パターンと類似していることから、ヒトの側頭葉てんかんモデルとして多くの研究者によって使用されている。そこで本年度は、KA誘発性のてんかん発作がラット脳異物解毒機構に及ぼす影響と、てんかん治療薬が脳異物解毒機構に及ぼす影響の2点を明らかにすることを目的とした。 7週齢の雄性Sprague-DawleyラットにKA(10 mg/kg)を単回腹腔内投与後、行動観察を行い、てんかん発作の有無をステージ分類により判定した。ステージ4(立ち上がり)または5(立ち上がり後、転倒)が10分以上持続したラットをてんかん重積状態(SE)群とし、てんかん発作の症状を全く示さなかったラットを無反応(NR)群とした。KA投与24時間後に小脳、皮質、海馬、線条体、視床を摘出した。酸化ストレスマーカーであるHeme oxygenase-1(HO-1)と、異物解毒機構で主要な役割を担う薬物代謝酵素の発現量を定量した。KA誘発性のてんかん発作により、主に皮質および海馬で酸化ストレスが惹起されたと示された。UDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)1A1は、SE群の皮質や海馬で有意に増加した。UGT1A6は、皮質でSE群およびNR群ともに有意に増加した。脳内で主に検出可能なチトクロムP450(CYP)はCYP2Dであったため、CYP2Dに絞って検討したところ、一部の脳部位でCYP2Dの発現変動が認められた。これより、てんかん発作によって脳部位特異的に薬物代謝酵素の発現が変動することが明らかとなった。 てんかん治療薬として汎用されるバルプロ酸をラットに7日間連続経口投与したところ、UGT1A1やUGT1A6の発現量は、一部の脳部位で有意に変動した。しかし、その発現変動メカニズムまでは明らかにすることができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
てんかん発作やてんかん治療薬による異物解毒機構の発現変動メカニズムについて検討したが、詳細は明らかにできなかった。しかし、来年度検討を予定している細胞内へのイオン流入と異物解毒機構の発現変動は関連している可能性があるため、来年度の検討を行った上で、この発現変動メカニズムについて結論づける予定である。おおむね平成28年度に実施予定であった検討は実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
てんかんは、神経細胞における過剰興奮が原因と考えられており、その過剰興奮の一因として、細胞へのナトリウムイオンやカリウムイオンの流入が挙げられる。そこで、平成29年度は、培養細胞にナトリウムイオノフォアやカルシウムイオノフォアなど、細胞内イオン濃度を変動させる化合物を曝露することで、薬物代謝酵素などの異物解毒機構の発現変動を明らかにする。また、てんかん治療薬による異物解毒機構の発現変動についても、培養細胞を用いて明らかにする。
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