2018 Fiscal Year Research-status Report
がん薬物療法における血管痛発現機序の解明および新規予防法の開発
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16K08397
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
菅 幸生 金沢大学, 薬学系, 准教授 (00467101)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋田 努 金沢大学, 附属病院, 准教授 (90409384)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 血管痛 / 予防対策 / オキサリプラチン / TRPA1 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、29年度から引き続き、血管痛発現機序の解明に取り組んだ。 ラット血管痛モデルを用いた検討により、29年度までの成果に加えて、活性酸素種(ROS)がオキサリプラチン(L-OHP)による血管痛に関与することを示す知見が得られた。抗酸化剤を前投与することにより、L-OHPによる血管痛が有意に抑制された。抗酸化剤であるグルタチオンは、肝機能の改善や色素沈着の治療に用いられ、非常に安全性が高い薬剤であることが示されている。そのため、血管痛を抑制するための最適な投与量や投与タイミングが明らかとなれば、臨床での新しい血管痛対策の確立につながる可能性がある。TRPA1選択的阻害薬もL-OHPによる血管痛抑制効果を示した。このことから、L-OHPによる血管痛では、ROSとTRPA1が関与していることが示唆された。 L-OHPと同様に血管痛の発現率が高いことが示されているゲムシタビン(GEM)についても、その発現機序が同じであるかの検討を進め、Naチャネル抑制薬であるプロカイン、および、選択的TRPチャネル阻害薬のルテニウムレッドで、GEMによる血管痛が抑制された。すなわち、抗がん剤の投与によって生じる血管痛は、同じ発現機序で生じていることが考えられた。このことは、L-OHPによる血管痛を確立することで、他の抗がん剤の投与により生じる血管痛の抑制ができる可能性を示す結果であると言える。 これまでの研究の結果より、TRPA1またはROSの働きを抑制する薬剤は、血管痛の予防・治療薬となり得ると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
30年度は、ラット血管痛モデルを用いた血管痛発現機序の解明に継続的に取り組み、検討予定の項目の約2/3に関する実験を終了することができた。最終年度である31年度中に予定した検証をすべて完了できる見込みとなっているため
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は順調に進んでいるため、計画通りに研究を進めていく。さらに、血管痛の発現に、TRPA1とROSの関与が示唆された結果を基に、L-OHPの分解物であるシュウ酸とプラチナのいずれかがこの反応を引き起こしているかの解明にも取り組むことを計画している。
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Causes of Carryover |
30年度に使用を予定していた試薬・器具があったが、実験環境の都合により、31年度に実施時期を変更することとなり、該当試薬・器具の購入が31年度となったため
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[Journal Article] Risk factors for oxaliplatin-induced vascular pain in patients with colorectal cancer and comparison of the efficacy of preventive methods2019
Author(s)
Suga Y, Ikeda N, Maeda M, Staub AY, Shimada T, Yonezawa M, Kitade H, Katsura H, Okada M, Ishizaki J, Sai Y, Matsushita R
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Journal Title
J. Pharm. Health Care Sci.
Volume: 4
Pages: 27
DOI
Peer Reviewed / Open Access