2017 Fiscal Year Research-status Report
在宅/医療現場における製剤の光分解リスクとその新規安定化に関する研究
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16K08399
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
小口 敏夫 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (30169255)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ダカルバジン / 光分解 / 安定化 / 血管痛 / ラジカルスカベンジャー |
Outline of Annual Research Achievements |
抗悪性腫瘍薬ダカルバジンは、特徴的な副作用として投与時に血管痛を惹起することが知られている。この原因物質はダカルバジンの光分解産物である5-diazoimidazole-4-carboxamideであることが報告されており、臨床現場ではその光分解を抑制するために全投与ルートの遮光等が行われている。我々は、平成29年度の研究の主な主題として、ダカルバジンの光化学的特性に着目し、そのメカニズムに基づいたダカルバジンの光安定化手法の開発を試みた。 ダカルバジンの光化学的特性をUV/VISスペクトルや活性酸素(ROS)アッセイにより評価した結果、330nm付近に吸収極大をもち、光照射時にROSを賛成することが認められた。ダカルバジンの光安定性改善を指向した製剤処方を検討するため、ダカルバジン水溶液に各種ラジカルスカベンジャーを添加し、強力な疑似太陽光を照射することで、ダカルバジンの光安定性の変動を検討した。 現在のところ、ラジカルスカベンジャーの一つであるシステインが効果的であり、しかもシステインは臨床的にも添加できる可能性が高いことから、ダカルバジンの光分解抑制に有用な第2物質であると考えらえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、ダカルバジンに関する検討は、昨年度まででほぼ終了することを目論んでいたが、最適なラジカルスカベンジャーのスクリーニング等で予想以上に時間を費やす結果となってしまった。 今後、より詳細な光分解抑制メカニズム解明を目指し、有用である可能性のある別のラジカルスカベンジャーでもさらに検討を行いたいと考えている。 また、臨床応用を鑑みると、第2物質添加によるダカルバジン薬物動態を検討し、薬物動態にほぼ影響を与えないという点も考慮すべきと考えらえた。 今年度は、固体状態での検討に入る予定であったが、昨年度に予備実験を行ったところ、固体物質の光分解挙動は複雑な要因があり、基礎的検討が予想以上に難しいと認められたことが、研究遅延の要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
ダカルバジンの光安定化に関して、より詳細なメカニズムを解明することを目指す。また、ラジカルスカベンジャー添加による薬物動態パラメータを算出し、その薬物動態への影響を検討する。 また、ダカルバジンを薬剤とする研究に関して、論文を作成し、投稿にまで到達したいと考えている。 上記の溶液系に関するさらなる検討および論文化を優先するが、同時並行で固体状態での光安定性に関しても種々の検討を試みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当該研究においては消耗品中心で科研費を使用する予定であったが、昨年度が終了した時点で概算していたよりも支出額を小さく済ませることができた。そこで今年度では、科研費の一部を光照射装置(Atlas社製 Suntest CPS Plus)の購入に使用することとした。 科研費調書作成時点の実験計画では、来年度から新たに固体系の検討を進める予定にしており、光照射装置は溶液系で用いていた静岡県立大学所有のものを利用するつもりであった。ただし、固体試料の調製装置である振動型粉砕機は山梨大学に所有するため、研究を進めるにあたっては山梨大学にも光照射装置があった方が便利であると思れたため、装置を購入することとした。
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Research Products
(1 results)